スマートフォン版へ

【エンプレス杯回顧】貫禄の差し切りマルシュロレーヌ(斎藤修)

  • 2021年03月05日(金) 18時00分
 逃げて直線でも単独先頭だったサルサディオーネ。後方から徐々に位置取りを上げ、ゴール前でこれをとらえたマルシュロレーヌ。3着に6馬身という着差が示すとおり、2頭のレースぶりが際立っていた。

 まず逃げたサルサディオーネのつくったペースが素晴らしい。川崎2100mは1周目スタンド前の直線でペースが落ち着き、13秒台後半〜14秒台のラップがあるのが常。一流馬が集まる川崎記念でも13秒台後半は普通にある。

 ところが今回、ダッシュよく飛び出したサルサディオーネが刻んだペースは道中でもほとんど緩むところがなく、12秒台〜13秒台前半。このペースを刻んでいって、勝負どころで後続に並びかけられれば失速してしまうのが普通だ。しかし、直線で失速したのは仕掛けてきたマドラスチェックのほう。サルサディオーネは直線で再び単独先頭。これをゴールまで並ぶまもなくとらえたのが、4コーナーで3番手まで位置取りを上げていたマルシュロレーヌだった。

 中団からレースを進めて直線勝負のマルシュロレーヌにとって、道中ゆったり流れるコーナー6つの2100m戦は、むしろその強さを際立たせることとなった。唯一の懸念材料だった小回りコースも無難にこなした。JBCレディスクラシックでは3着に敗れたが、これでダートに転向して5戦4勝。牝馬のダートグレードは3勝目となった。

 現役の牝馬ではプリンシアコメータがダートグレード4勝を挙げているが、2017年の4歳時から年に1勝ずつで、凡走も少なくない。対してマルシュロレーヌは約半年間で3勝。混戦で推移してきたダート牝馬戦線で中心的な存在となったことは間違いない。計算し尽くしたように差し切る川田将雅騎手の落ち着いたレース運びも素晴らしい。

 こうなるとマルシュロレーヌには、JpnIのJBCレディスクラシックで負けたのはむしろ幸運だったとも言え、しばらくはJpnI勝ちの過剰な別定重量を課されずに走ることができる。もう一段階評価を上げるには、牡馬と対戦してのタイトルということになるのだろう。

 負けてなお強しというサルサディオーネのレースぶりについては前述したとおり。勝ちタイムの2分14秒1は、近10年で最速で、2分14秒台は2010年のブラボーデイジー(2分14秒5)以来のこと。良馬場でも速いタイムでの決着は、この開催の前にコースの砂が入れ替えられた影響はあったかもしれない。それにしても2番手追走のローザノワールが9着に沈み、3番手から勝負に来たマドラスチェックに6馬身差は、価値ある2着だった。

 サルサディオーネは、中央在籍時にはダートグレードで勝ち切るまでには至らず、昨年1月の出走から大井・堀千亜樹厩舎の所属となって、牝馬ダートグレード2勝のほか、牡馬相手にも2勝。明けて7歳の牝馬に“成長”という言葉はそぐわないが、この1年での充実ぶりは素晴らしい。すでに引退してしまったがクレイジーアクセルとの無謀とも思える何度かのハナ争いや、昨年の日本テレビ盃では牡馬一線級を相手に超ハイペースのハナを切ったという経験で鍛えられた成果ともいえそうだ。

 そういうわけで今回は3着以下の評価が難しい。3コーナーから勝負に行ったマドラスチェックは完敗の3着。馬体重の増減が、前走がプラス13kgで、今回はそれ以上に戻してマイナス18kg。そうした変動の影響もあったかどうか。

 ダノンレジーナは、この厳しいペースを読んだのか中団よりうしろからの追走。マルシュロレーヌが向正面から徐々に位置取りを上げていくのを追いかけるように進出したが、さすがに直線では置いていかれた。JBCレディスクラシックでも4着だったように、今後もこの路線での上位争いが期待できる。

 レーヌブランシュはスタートでタイミングが合わず、それでも5、6番手あたりにつけていったが、向正面でペースアップしたところで追走に一杯になってしまった。

 レーヌブランシュと同じような位置を進んだプリンシアコメータは、向正面のペースアップで先行勢との差を詰める場面もあったが、直線では反応がなかった。ときに強いレースもするが、負けるときはあっさりという、この馬にはよくあること。

みんなのコメント

ニュースコメントを表示するには、『コメント非表示』のチェックを外してください。

ミュート・コメント非表示の使い方
  • 非表示をクリックし「このユーザーの投稿を常に表示しない」を選択することで特定のユーザーのコメントを非表示にすることができます。(ミュート機能)
  • ※ミュート機能により非表示となった投稿は完全に見えなくなります。このため表示件数が少なく表示される場合がございますのでご了承ください。なお、非表示にしたユーザーはマイページからご確認いただけます。
  • 『コメント非表示』にチェックを入れると、すべてのニュース記事においてコメント欄が非表示となります。
  • ※チェックを外すと再びコメント欄を見ることができます。
    ※ブラウザを切り替えた際に設定が引き継がれない場合がございます。

アクセスランキング

注目数ランキング

ニュースを探す

キーワードから探す