逃げて直線でも単独先頭だった
サルサディオーネ。後方から徐々に位置取りを上げ、ゴール前でこれをとらえた
マルシュロレーヌ。3着に6馬身という着差が示すとおり、2頭のレースぶりが際立っていた。
まず逃げた
サルサディオーネのつくったペースが素晴らしい。川崎2100mは1周目スタンド前の直線でペースが落ち着き、13秒台後半〜14秒台のラップがあるのが常。一流馬が集まる
川崎記念でも13秒台後半は普通にある。
ところが今回、ダッシュよく飛び出した
サルサディオーネが刻んだペースは道中でもほとんど緩むところがなく、12秒台〜13秒台前半。このペースを刻んでいって、勝負どころで後続に並びかけられれば失速してしまうのが普通だ。しかし、直線で失速したのは仕掛けてきた
マドラスチェックのほう。
サルサディオーネは直線で再び単独先頭。これをゴールまで並ぶまもなくとらえたのが、4コーナーで3番手まで位置取りを上げていた
マルシュロレーヌだった。
中団からレースを進めて直線勝負の
マルシュロレーヌにとって、道中ゆったり流れるコーナー6つの2100m戦は、むしろその強さを際立たせることとなった。唯一の懸念材料だった小回りコースも無難にこなした。
JBCレディスクラシックでは3着に敗れたが、これでダートに転向して5戦4勝。牝馬のダート
グレードは3勝目となった。
現役の牝馬では
プリンシアコメータがダート
グレード4勝を挙げているが、2017年の4歳時から年に1勝ずつで、凡走も少なくない。対して
マルシュロレーヌは約半年間で3勝。混戦で推移してきたダート牝馬戦線で中心的な存在となったことは間違いない。計算し尽くしたように差し切る
川田将雅騎手の落ち着いたレース運びも素晴らしい。
こうなると
マルシュロレーヌには、JpnIの
JBCレディスクラシックで負けたのはむしろ幸運だったとも言え、しばらくはJpnI勝ちの過剰な別定重量を課されずに走ることができる。もう一段階評価を上げるには、牡馬と対戦してのタイトルということになるのだろう。
負けてなお強しという
サルサディオーネのレースぶりについては前述したとおり。勝ちタイムの2分14秒1は、近10年で最速で、2分14秒台は2010年の
ブラボーデイジー(2分14秒5)以来のこと。良馬場でも速いタイムでの決着は、この開催の前にコースの砂が入れ替えられた影響はあったかもしれない。それにしても2番手追走の
ローザノワールが9着に沈み、3番手から勝負に来た
マドラスチェックに6馬身差は、価値ある2着だった。
サルサディオーネは、中央在籍時にはダート
グレードで勝ち切るまでには至らず、昨年1月の出走から大井・
堀千亜樹厩舎の所属となって、牝馬ダート
グレード2勝のほか、牡馬相手にも2勝。明けて7歳の牝馬に“成長”という言葉はそぐわないが、この1年での充実ぶりは素晴らしい。すでに引退してしまったが
クレイジーアクセルとの無謀とも思える何度かのハナ争いや、昨年の
日本テレビ盃では牡馬一線級を相手に超ハイペースのハナを切ったという経験で鍛えられた成果ともいえそうだ。
そういうわけで今回は3着以下の評価が難しい。3コーナーから勝負に行った
マドラスチェックは完敗の3着。馬体重の増減が、前走がプラス13kgで、今回はそれ以上に戻してマイナス18kg。そうした変動の影響もあったかどうか。
ダノンレジーナは、この厳しいペースを読んだのか中団よりうしろからの追走。
マルシュロレーヌが向正面から徐々に位置取りを上げていくのを追いかけるように進出したが、さすがに直線では置いていかれた。
JBCレディスクラシックでも4着だったように、今後もこの路線での上位争いが期待できる。
レーヌブランシュはスタートでタイミングが合わず、それでも5、6番手あたりにつけていったが、向正面でペースアップしたところで追走に一杯になってしまった。
レーヌブランシュと同じような位置を進んだ
プリンシアコメータは、向正面のペースアップで先行勢との差を詰める場面もあったが、直線では反応がなかった。ときに強いレースもするが、負けるときはあっさりという、この馬にはよくあること。