さて、どこからツッコんだらいいのやら-。競馬場から流れてきたFAXを読んで、そう思ってしまいました。「持続化給付金の不正受給疑惑」に関する記者説明会が6日に行われ、
JRAが内部調査の結果を公表。調教師19人、騎手13人を含む165人が計約1・9億円受給と、トレセン等でうわさになっていたよりもはるかに多い人数、金額が明るみに出ました。
私はデスク業務のため会見には出席していません。ただ、現場の記者から聞く限り、いろんな意味でガッカリさせるものだったようです。
調査で分かった数字もショッキングでしたが…まさか「結果を報告しました。受給者がお金を返すのでハイ終了」じゃあるまいな、と思ったら、そのまさかだったことに驚きました。処分については、調教師会や騎手会の内規があるため現状は介入せず、ということなのでほぼ丸投げ。再発防止策も正直、「これだけ?」と感じるものばかり。
JRAが現行のルール上できることに限界があるのは承知しています。職員の中にも、もどかしく思う人が数多くいるに違いない。でも、世の中がそんな事情をくんでくれるわけがないのです。何のための統括団体なのかと、ファンは首をかしげていることでしょう。
日本調教師会会長・橋田師や日本騎手クラブ会長・
武豊のコメントを同日、ホームページやリリースで流してしまったのもタイミング的によろしくなかった。ここらで
シャンシャン手を鳴らし、あわよくば幕引きとしたい思惑が見える…などと勘繰られても仕方がありません。
競馬を知らない人にも火がつきました。
いや、待てよ。批判の矛先を、あえて自分たち
JRAへ集中させるという高度な戦略なんじゃないかと思えてきました。非難の的がアチコチに分散するより、1カ所にまとめた方が消火は早い。申請した厩舎関係者、指南した税理士はもちろん、この問題を結果的に放置してしまったマスコミまでもかばってくれるとは、なかなか人情味のある話じゃないですか。
…皮肉はこれぐらいに。会見でとりわけ拍子抜けだったのは、渦中の馬主税理士にさしたるおとがめもなかったことです。これまで本人への聞き取りすらなく、今後の面談も「いつやるかというのはこれから」(常務理事)と随分のんびりしたもの。「あくまで法的にグレーだから踏み込めなかったようだ」と小耳に挟みましたが、法をかいくぐるプロを相手に、律義にルールを守って攻めても勝ち目はありません。結局のところ、われわれとしては道義を説き、味方を増やす方が近道なのかな、とも最近感じています。
最初の報道から、たった半月ちょっとで取り巻く世界は様変わり。競馬ファンは、関係者は、互いに多くのものを失いました。馬券が当たった、外れたで無邪気に楽しめた時間はいつ戻ってくるのか-。今回の会見が収束の足掛かりになるかと少しは期待していましたが、一向に“日常”が近づく気配は感じられません。
今後もこの問題はさまざまな形で報じられることになると思います。もう一般紙もテレビも黙ってはいません。ただ、再生を願ってたたくのがわれわれ競馬マスコミの立場。攻める(責める)と同時に、失った日常を取り戻すことも念頭に動かなければ、永遠に終着をみない。
それにしても、何と険しい道のりよ…。ため息をつきながら馬券を買う日が続きます。
(デイリースポーツ・長崎弘典)
提供:デイリースポーツ