昨年、史上初となる無敗での牝馬3冠を達成したのが
デアリングタクト。「世紀の一戦」とうたわれた
ジャパンCでは
アーモンドアイ、
コントレイルと激突。最後は内へモタれて3着に敗れはしたものの、小差に踏みとどまり、その実力が本物であることを証明してみせた。
「初めて自分よりも強い馬と対戦したわけだし…。外から
コントレイルにプレッシャーをかけられるところもあった中で、よく頑張ってくれた」
杉山晴調教師は
ジャパンCの激闘をこう振り返りつつも、実は気になる発言もしている。
「
ジャパンCの前から冬毛が伸びていたんですよね。今回も同じように冬毛は伸びている。まあ、それでいて稽古は動けているんだけど…」
寒い時期はどうしても見栄えが良くないようなのだ。振り返れば、明け3歳時もそうだった。当初は1月中旬に行われる白梅賞で始動予定だったのだが、動き、毛ヅヤが冴えないとの理由で
エルフィンSに目標を切り替えた。結局、この
エルフィンSを快勝したことで、ゆとりを持って
桜花賞へ向かえた経緯がある。
仮に白梅賞へ出走して勝っていたとしても、
桜花賞へ向かうには、もう一戦挟むことになっていたことを考えると…。当時の杉山晴調教師の好判断が、無敗の牝馬3冠へとつながったと言っても過言ではあるまい。
一方で
秋華賞がそうだったように、
デアリングタクトはレース間隔が空き過ぎると尋常じゃないくらい
テンションが高くなり、競馬を使うことで気持ちが
リセットされる傾向にある。そのあたりのことも考慮したうえで、暖かくなるのを待った
金鯱賞で始動して、香港のクイーンエリザベスII世カップ(4月25日=シャティン競馬場、芝2000メートル)へ向かうローテーションを決断したのだろう。
「(始動戦は)
京都記念も選択肢にはあったんだけど、厳冬期のレースは避けたかったのと、前走で内へモタれる面があったので、もう一度、左回りの走りを確認したい気持ちも。結果を求められる立場とはいえ、次でさらにコンディションが上がるようにやっているし、今回は先々へ向けて内容を重視したい」
杉山晴調教師はあくまでも、この4歳始動戦を次走、そして秋へ向けての
ステップと捉えている。とはいえ、昨年のこの時期よりも稽古では動けているように、全体的な底上げは確実になされているのだから、トレーナーが課題に挙げているものはしっかりとクリアしてくれることだろう。
秋のローテは現時点では未定ながら、仮にクイーンエリザベスII世Cで圧巻の走りを見せてくれるようなら…。いいイメージを持っていない冬場より前に勝負をかける意味でも、世界最高峰の
凱旋門賞(10月3日=パリロンシャン競馬場、芝2400メートル)が視野に入ってくるのではないか。
凱旋門賞当日は当方45歳の誕生日。番記者として歴史的瞬間に立ち会えたら最高だろうな、と早くも勝手な妄想をしている。
(栗東の遠吠え野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ