行くか、下げるか、展開の鍵を握ると見られていた
ミルコ・デムーロの
キセキは、他馬と横並びのスタートを切った。内の馬と接触したことも影響したのか、デムーロは促すことなく出たなりで
キセキを走らせ、最後方からレースを進めることになった。
一方、
西村淳也が乗る
ギベオンは、5番枠から速いスタートを切り、ゲートからの10完歩ほどで無理なくハナに立った。実戦では同馬に初騎乗となった西村はこう振り返る。
「追い切りのときから状態がよく、自信を持って乗りました。藤原(英昭)先生と、枠順が決まってからも相談して、このメンバーならハナに行こうかとも話していました。スタートしてからでないとわからないところもありましたけど、ゲートをスムーズに出てくれて、そのときにはハナに行こうと思いました」
断然の1番人気に支持された
松山弘平の
デアリングタクトも好スタートを切ったが、外の馬たちを先に行かせ、6番手につけた。
向正面に入っても
ギベオンは先頭をキープしている。半馬身ほどの差で2番手に
サトノフラッグ、さらに
北村友一の
ポタジェ、
ブラヴァス、
グローリーヴェイズらがつづく。
デアリングタクトは、それら先行集団の最後尾から2馬身ほど後ろを、やや掛かり気味にも見える手応えで進んでいる。
先頭から最後方まで10馬身ほど。
1000m通過は1分1秒4。逃げるなら淀みのない流れをつくると思われていた
キセキが行かず、10頭という少頭数。ゆったりした流れになると思われたが、重という馬場状態を考えると、これでも平均ペースか。
ギベオンが1馬身ほどのリードで3、4コーナーを回る。
2番手は
サトノフラッグ。
デアリングタクトは
ギベオンから3、4馬身のところまで差を詰めていた。3番手の
ポタジェのほぼ真後ろにつけ、外からスパートする機をうかがっている。
4コーナーの出口で、
ポタジェがやや外に膨れて、直線に入った。
デアリングタクトの松山は、前にいる
ポタジェが自分より内に行く「間」をつくるために一瞬、手綱を引いた。外に膨れないよう北村が鞭を右手に持っていたことも見えていただろうから、計算外の動作だったのではないか。
そのため、スパートするタイミングが、わずかに1、2完歩だが、遅くなった。また、直線に向く前に手前を右にスイッチしていた。
内を走る
ギベオンが逃げ込みをはかる。
「3、4コーナーでちょっと手応えが悪くなりましたけど、直線に向いてからはまた伸びてくれたので、何とかしのいでくれと思って乗っていました」と西村。
ラスト200m地点でも、先頭の
ギベオンから
デアリングタクトまで2馬身ほどの差がある。
デアリングタクトが1完歩ごとに差を詰めて並びかけ、内外離れて鼻面を揃えかけたところがゴールだった。
ギベオンが首差で
デアリングタクトの追い込みを封じ、重賞2勝目を挙げた。
デビュー4年目で嬉しい重賞初制覇となった西村はこう喜びを語った。
「内外離れていたので(勝ったかどうか)わからなかったのですが、祈るだけでした。後輩も重賞を勝っていたので、ようやく勝てて嬉しいです。これからも頑張りますので、またよろしくお願いします」
(文:島田明宏)