あれは4年前。
アルアインが
毎日杯を制した段階で、これは
皐月賞の有力候補になると感じた。普通の馬なら潰れてしまう厳しい競馬を2番手からあっさり押し切った内容と、短距離で活躍した
母ドバイマジェスティの影響が強いのか、
ディープインパクト産駒ながら寸詰まりで胸前が広い体形に、中山2000メートルへの適性を感じたからだ。
一方で、その馬体の特徴からダービー向きとは考えていなかった。池江調教師も東京2400メートルに向けて「これまでのような強気な競馬をしていたらのみ込まれてしまう。距離延長がポイントになるでしょう」と話していたほど。実際、
アルアインは
皐月賞を制しながらも、ダービーでは5着止まり。全競走成績を振り返っても1600〜2000メートルで5勝を挙げながら、それ以上の距離ではあと一歩で勝利に手が届かなかった。
ゆえに、その全弟
シャフリヤールも距離の壁と戦うことになると考えていた。しかし、初戦のパドックに現れた姿は兄のイメージとは異なるもので…。500キロを超える大型馬の
アルアインとは対照的に、
シャフリヤールは450キロ前後のシャープな馬体。胴が詰まり気味なのは同じでも、
父ディープインパクトがより強く出ている印象を受けた。
レースはラスト3ハロン11秒9-11秒6-11秒5の加速ラップをものともしない差し切りV。兄とは違う瞬発力という武器で、兄同様に大物感あふれる競馬を披露した。藤原英厩舎の番頭・田代助手が「兄とはまったく違うタイプだと思う」と話すのも納得だ。
もちろん、「大きい舞台を目指せる」ポテンシャルの高さは一族共通。兄以上に距離の融通性を感じさせる馬体は「成長はこれから」と伸びシロを多分に残している。そんな
バックグラウンドを考えれば“兄超え”の期待が高まるのも当然だろう。そのためにも、GIII
毎日杯(27日=阪神芝外1800メートル)での賞金加算は至上命令となる。
「前走の
共同通信杯(3着)は長距離輸送、左回りなど初物尽くしの中でも能力を見せてくれた。メンタルの強い馬だし、自在性もあるので、コース替わりは問題ない。徐々に中身もしっかりしてきたからね」
陣営は「まだまだ上にいける素質を感じる」期待のスター候補生に熱視線を送りながら着々と素質に磨きをかけている。
身軽なボディーにGI級のエンジンを搭載した
シャフリヤール。ここを勝てば一躍クラシックの有力候補に躍り出るだけでなく、ダービーで兄の無念を晴らす可能性まで十分にあると記者は考えている。
(西谷哲生)
東京スポーツ