2016年の
凱旋門賞遠征に帯同取材した
マカヒキは個人的に思い入れの非常に深い馬であり、
トップフォームを取り戻せていない現状でも、能力の絶対値の高さを
リスペクトしている一頭だ。それでも今回の一戦は厳しかろう。帰厩当初からはだいぶ良化してきたが、それでもやはり…。
ユーキャンスマイルも昨秋までの6か月にも及ぶ休養後は全盛期の迫力を取り戻すことに苦労している。追い切りの動きが昨秋とは違っていた前走の
阪神大賞典では2着を確保。これが3か月ぶりの一戦だったのだが、休むならこのくらいの間隔まで。そのあたりについては「以前はなんだかんだでずっと使ってきた。レース間隔は空けても3、4か月まで。それくらいじゃないと馬の気持ちが下がっちゃうんだろうね。実際、昨秋は息遣いが良くなくて、それがなかなか改善されなかった」と友道調教師も認めている。
ならば、今回はいいころの状態に戻ったかといえば、個人的な見解ではそこまでは戻せていない。そもそもが「右回りの3200メートルはベストの舞台ではなく、その状況でもパフォーマンスが落ちないというだけ。ベストは左回りのクラシックディスタンスだと思っています。だから今回も崩れることはないでしょうけど、長距離に適性がある馬がいれば、これまでの
天皇賞・春(一昨年=5着、昨年=4着)のような結果に終わってしまうかも」と大江助手のトーンも微妙なものだ。
友道厩舎3頭出しで攻勢をかける一戦ながら、大きな期待を寄せているのはエース格の一頭…が実情ではないだろうか。
それこそが一昨年の
菊花賞馬
ワールドプレミアである。この出走馬で唯一の長距離GIホースが実はとんでもないことになっていて、それは今回からタッグを組む福永を背に、ウッドで敢行された1週前追い切りで周知の事実に。
休み明けの
日経賞(3着)から1か月程度しか経過していないにもかかわらず、前回よりもはるかにたくましく感じる馬体の変化にまず驚き、自身の前を走る
ポタジェ(古馬オープン)も素晴らしい馬であるはずなのに、まるで条件馬を相手にしているような、そんな迫力まで身につけるほどに至っている。もちろん、7ハロン95.5-12.4秒の強い負荷をかけられた追い切り内容自体も文句なし。仕上がり不足が危惧された前走とは何から何まで違うのだ。
大江助手にその感想を伝えると満足げな表情でこんな返答が。
「いや〜本当にその通り。ものすごく良くなっているんですよ。全体的に幅が出て、つくべきところに筋肉がついた。以前は調教でも少し乗り難しいところがあって、(武)豊さんが乗ってくれたときでも頭を上げてしまうようなところがあったじゃないですか。でも、現在は動くべきところでちゃんと動かせる体になっているから、ものすごく乗りやすい。それは(福永)祐一さんも言ってくれましたね」
日経賞の前とはあまりに違い過ぎるトーンにこちらが驚いてしまった。
「元来が叩き良化型。前走はなんとか間に合ったという仕上がりでした。80点の表現は“前哨戦仕様”という前提があってのもので、それがGIに向かうものとするならば60点くらいがいいところでしたね。でも今回は“GI仕様で文句なし”。復調途上の
ジャパンCでも6着と大きくは負けていませんでしたし、
有馬記念は位置取りを徐々に悪くしてしまう状況からの5着。能力も上位だと思ってますよ」(大江助手)
28日の最終追い切りを待たずに“主役決定”と言いたくなるような状況。緊急事態宣言下でも楽しいGWが過ごせそうな気がしてきた…って東スポ1面では
アリストテレスが「絶好の買い時」とまで書いてしまったような。
アリストテレスと
ワールドプレミア、果たしてどっちに◎を打つべきか…。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ