春の3歳GIは来週の
オークス、再来週のダービーを残すのみとなった。少数の“勝ち組”を除けば、すでに次代のPOG戦線へと視線が移っていたりするわけで、実際に記者にも「2歳世代のイチ押しは?」といった質問がくることが多くなった。ありがたい話だ。昨年の指名馬で期待通りの活躍をしてくれたのは
ステラヴェローチェくらい。そんな記者の“眼力”をいまだに信じてもらえるのだから…。
ゆえに今年はやらねばなるまい。そう意気込んだところで、行動パターンは基本的に同じ。懇意にしてもらっている音無調教師のダービー制覇を見届ける――。これを現在の最大ミッションにしている記者の仕事はまず音無厩舎の“一番馬”を見つけること。POG取材で「(2017年の
青葉賞を勝ち、ダービーでも1番人気の支持を受けた)
アドミラブルの再来かもしれん」という言葉が出た
ダノンフォーナインがいる今年は実に簡単だったはずが…。
3月中旬に入厩してきたこの
ダノンフォーナインはダービー馬候補と思えないほど頼りない歩き方。トモが甘いのか、歩いている姿に力強さをまったく感じないのだ。音無調教師に率直な感想をぶつけてみると「それは当たり前だよ。ゲート試験を受けさせるために入厩させただけでまるで鍛えてないもの。これから牧場でしっかりと乗ってもらって、こっちでもきっちりと乗る。まあ、それからだよな」と心配無用の口ぶり。なるほど、そういうことね。ならば、我が見解は封印しようか…なんて尻軽ぶりを発揮できるのもPOG取材の醍醐味だ(苦笑)。
「歩いているときは頼りないけど、走らせるといいフットワークをする。“
アドミラブルの再来”かどうかはわかりませんが、良くなりそうな感じのある馬ですよ」とは担当の林助手。最終
ジャッジは再度の入厩を果たしてからでも遅くはないが、今年はこの
ダノンフォーナインと心中しようと決めた次第である。ちなみに
宝塚記念当日(6月27日)のデビューを視野に入れているそうだ。
一方、須貝調教師の「この世代は違うよ」という力強い言葉を聞き、各地で須貝厩舎の馬を激奨して始まった昨年のPOG戦線だったが…。肝心の
ソダシは血統を理由に対象から除外。
父クロフネ、
母ブチコを理由にダート馬と決めつけてしまった判断に反省しきりである。
「誰もがそうやって先入観で物事を見ているんだよね。ダートも走るかもしれないけど、芝がダメな走りではなかった。なので最初は芝を使った。それだけのことなんだけどな。
オークスの距離に関しても同じ。最初から距離は持つと思っていたし、個人的には
桜花賞よりも
オークスのほうが向いていると思っているくらいだから」と須貝調教師。いやいや、本当に面目ないと思う一方で、
オークスだけはトレーナーの
ジャッジが狂う可能性もある…なんてことも考えている。
理由は父の
クロフネ。またまた血統を理由にして申し訳ないが、
クロフネは芝、ダートで分けるのではなく、1800メートルまでか、それ以上の距離かで分別するのが正解とみているからだ。
クロフネ産駒は芝で重賞を37勝。しかし、それはすべて1800メートル以下の距離であり、2000メートル以上の距離では0勝、2着も7回のみである。ハードルの高さを痛感する記録ではないか。
ソダシが挑む最大のミッションは
デアリングタクトに続く無敗の2冠制覇ではなく、
クロフネ産駒初の長距離GI制覇のほう。トレーナーの眼力か、それとも“血の呪縛”か――。希代の
アイドルホースが走る来週末の
オークスはPOGうんぬんを抜きにして大注目なのである。
(松浪大樹)
東京スポーツ