先週の
オークスには11頭の関東馬が出走。当該週の水曜にはルメール、
武豊、福永といった関西所属のビッグネームが美浦トレセンで追い切りに騎乗し、かつてないほどの盛り上がりを見せた。
今週の第88回
日本ダービー(30日=東京芝2400メートル)にしても
エフフォーリアや
サトノレイナスといった主役級は関東馬。エントリーこそ7頭にとどまったが、関東は近年まれに見る盛況ぶりとなっている。
前記2頭以外にも
皐月賞2着の
タイトルホルダーや
毎日杯2着の
グレートマジシャンなど魅力ある馬が多く、伏兵探しには困らない状況だが、“関西騎手が騎乗”をテーマにしてみると、浮上してくるのが松山=
グラティアスである。
昨年は
デアリングタクトで無敗のまま牝馬3冠を達成。牡馬クラシックも4年前に
アルアインで
皐月賞を制しており、完全制覇へ残されたパーツを埋めるべく、ダービー、
菊花賞へと着々と照準を絞っている。その松山は先週木曜に美浦に来場。
グラティアスの1週前追い切りに騎乗して初コンタクトを取った。
「思っていたよりも前向きさがあるなと感じました。競馬に行くと変わるかもしれないけど、しっかり折り合いをつけていきたいですね。動きは良くて、反応も問題なし。いい馬です」と松山。パートナーの癖を感じ取りつつ、確かな素材なのを確信した様子だ。もちろん、「常に目標というか、ダービーは特別な存在。乗れるだけでもありがたいですが、しっかりそこで結果を出したい」と気合が入っている。
改めて
グラティアスに関して注目してほしいポイントは、デビュー2戦目に年明けの
京成杯を制した後、そこから3か月間隔を空けて
皐月賞に直行したローテーションである。多様な臨戦過程でクラシックを制するケースが増えた昨今は、
トライアルの重要性が以前とは違ってきている。しかし、ダービーに
ピークを持っていくと考えた場合、決して意図的ではないにせよ、
皐月賞を“叩き台”にしたローテこそが理想的ではないのか?
4年前の
レイデオロは前年の
ホープフルS(1着)から、ぶっつけでの
皐月賞(5着)を経てのダービー制覇。そこまでの実績を比べれば、
グラティアスと
レイデオロを対等には扱えないにせよ、上昇曲線という意味では、間違いなく最上級の過程と言えるはずだ。
実際、管理する加藤征調教師は「馬がうなっているくらいのいい状態。それでいてすごく冷静さもある。
皐月賞の後はしっかり疲れを取って、じっくり体調を整えてきた。休み明けを使ったことで調整も楽にできた」と順調な調整ぶりを強調。さらには「
皐月賞は内が有利な馬場での外枠。それに直線で他馬と接触する不利がありながらも外を回して最後は詰めてきた。スムーズならもっと際どかったはず」と
皐月賞6着が決して力負けではないこともまた強調していた。
ダービー本番まで残すところ1週間を切った。陣営は最終段階の選択として、レースで耳覆いを着けるか否かを検討中だ。1週前追い切りでは角馬場でのウォーミングアップの後にそれを外したが、最終追い切りでは装着したまま追い切る予定。もちろん、再び松山が手綱を取る。果たしてどのような結論でレースに臨むのか。まさに人事を尽くして挑む頂上決戦がそこにある。
(立川敬太)
東京スポーツ