NHKマイルC直後、
バスラットレオンはSNS上で「トレンド入り」してしまった。3番人気の支持を集めながら、スタート直後につまずいて、まさかの落馬。仮に大観衆の前で行われていたなら悲鳴が聞こえてきそうなシーンだった。付け加えると、空馬状態でも無邪気に走る姿もまた、いろいろな意味でうけていたような…。
この
バスラットレオンの知名度を飛躍的に引き上げたのは3走前(1勝クラス平場)。3月デビューの新人女性騎手・
古川奈穂が初勝利を挙げた時の“相棒”として地上波のスポーツニュースでも取り上げられたほどで、2馬身半差快勝の鮮やかなゴールシーンが記憶に残っている方も多いのでは。
続くニュージーランドTでは
藤岡佑介に乗り替わったものの、そのレース内容はこれまた圧巻。2ハロン目からすべて11秒台のラップを刻んだ上で5馬身差の独走劇を決めてしまった。
ここで改めて問いたい。
バスラットレオンの快進撃の始まりは「奈穂マジック」によるものだったのか? 担当の武村助手には「そうだとファンは盛り上がるんやけどな(笑)」と、やんわり否定されてしまったが、変身ぶりの要因については丁寧に教えてもらえた。
「
札幌2歳S(3着)が終わって栗東に戻ってきてから担当になったんだけど、当時の状態は最悪。初めてまたがった時はトモがクタクタで、ハミに乗っかってキャンターをしていたくらい。本当に新馬を勝った馬なのかっていう感じだった」
振り返れば、
札幌2歳Sはラスト1ハロン13.0秒を要する、2歳戦にしては相当にタフな競馬。その疲れが肉体面、そして内臓面にも出てしまっていたようだ。つまり、昨秋からは明らかに本調子には程遠い状態。にもかかわらず、暮れの
朝日杯FSでは4着と格好をつけられたのは地力の高さ以外の何ものでもない。
「(年明けの)
シンザン記念(3着)の後に放牧に出たんだけど、そこからようやく本来の姿に戻ってきた感じだった。いい状態の時に(古川)奈穂が乗って結果も出してくれたって感じかな」
もちろん、落馬による競走中止になった後も、上り調子だった状態に陰りはない。
「1週前追いに乗ってくれた(藤岡)佑介も“前回よりも良くなっている”と言ってくれたくらい。馬体がムキムキになって張りからして違うからね。力みもうまく取れている感じだから、今の雰囲気なら距離もこなしてくれるんじゃないかな」
左肩の手術を行い、現在は秋の復帰に向けてリハビリ中の
古川奈穂は、
NHKマイルC時に東京競馬場に駆けつけて手伝いをしていた。このダービー(30日=東京芝2400メートル)も裏方として携わることになるようだが、自身に初勝利をプレゼントしてくれた
バスラットレオンの走りを見て何を思うのか。
復帰後もしっかりと結果を残せていければ、近いうちにすべてのジョッキーの憧れでもある「夢の大舞台」に立てる日が訪れるのではなかろうか。
(栗東の遠吠え野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ