「
日本ダービー・G1」(30日、東京)
第88代ダービー馬に輝いたのは4番人気の
シャフリヤール。無敗の2冠を狙った1番人気
エフフォーリアをゴール寸前で差し切り、わずか10センチ差で栄冠をつかんだ。管理する
藤原英昭調教師(55)=栗東=にとっては、10年
エイシンフラッシュ以来2度目の頂点。デビュー前に感じた“予感”を見事、現実のものにしてみせた。
「あいつ(福永)には貸しがいっぱいあって、いつか返せと言ってきたが、それがこの舞台でうれしい」
3年前のダービー。藤原英厩舎が送り出した
皐月賞馬
エポカドーロの2冠を阻んだのは、福永騎乗の
ワグネリアンだった。チームとしてタッグを組んだ今回、最高の形でその時の“貸し”が返ってきた。師にとっては10年
エイシンフラッシュ以来、11年ぶり2度目のダービー制覇。「こういう巡り合わせが競馬のドラマだな」と満面の笑みを浮かべた。
デビュー前から「(ダービーを勝つ)チャンスがある馬」という“予感”はあった。そして、20年10月の新馬戦Vでその意を強くする。2戦目の
共同通信杯こそ
エフフォーリアの3着に敗れたが、
毎日杯をレコードで制し、能力を再認識。自信を持っての参戦だった。
馬体は牡馬にしては小柄な440キロ台。成長を促すことを優先して
皐月賞はパス。それが吉と出た。「健康体で出す。それを一番に。力は確認していましたから」とトレーナー。この日は前走から4キロ減の444キロ。出走17頭で最少馬体重だったが、「体重より見た目。筋肉の張りが良く、精神面でも強さがあった」と胸を張った。
無敗の
皐月賞馬
エフフォーリアの強さは重々承知。だが器用さ、操縦性の高さを生かせば、「枠が良ければいい勝負ができる」と踏んでいた。ダービーレコードが飛び出した極限での戦い。勝者と敗者を分けたのは、たった10センチ。ただそれは、果てしなく大きな10センチだった。
指揮官は「将来ある若武者・
横山武史は、きょう悔しくて眠れないだろう」と敗者の心境を思いつつ、「だけど、今後必ずあいつは競馬界を背負って立つ。このダービーはずっと記憶に残るだろうし、それが藤原厩舎で福永だったということは、きょうの勝利は意味がある」と満足げにうなずいた。
「息の長い活躍ができる、ファンに愛される馬づくりをして、ダービー馬の名に恥じぬ結果を残していきたいですね」。まだキャリア4戦。底知れぬ能力を秘めた第88代覇者はこの先、さらに強くなった姿を見せてくれるはずだ。
提供:デイリースポーツ