第10レースの前から雨が降りはじめたが、やがてそれもやみ、良馬場のコンディションのまま、出走馬18頭がゲートを飛び出した。
エアアルマスがハナを切り、
アトミックフォース、
セダブリランテスらがつづく。
1番人気の
アルジャンナは好位5、6番手の馬群のなか。
石橋脩が乗る3番人気の
ザダルは、それを2馬身ほど前に見る中団馬群のなかで折り合いをつけている。
「操縦性の高い馬であることはわかっていましたし、リズムよく、最後は馬場のいいところに誘導できるように、コースのことを気にしながら乗りました」と石橋。
1000m通過は58秒8。先頭から最後方まで10馬身ほどにかたまったまま3、4コーナーを回って行く。
先頭の
エアアルマスは、馬場の悪い内を3、4頭ぶんあけて4コーナーを回り、直線へ。
馬群は横にひろがり、各馬の鞍上のアクションが大きくなる。
ラスト400m手前で、
ザダルの前方が綺麗にひらけた。
石橋が手綱をしごくと
ザダルは鋭く反応し、内の
ヤシャマルと、さらに内にいた
アルジャンナをかわし、それらの前にいた
アトミックフォースの外に並びかける。
ラスト200m地点で
ザダルが
アトミックフォースを抜き去り、内から迫ってきた
サトノフラッグの追い上げをクビ差でしのいでフィニッシュ。見事、重賞初制覇を遂げた。
昨秋の
毎日王冠で5着に敗れて以来8カ月ぶりの実戦。馬体重のプラス12kgは成長ぶんだろう。
「ここ2週追い切りに乗せてもらいました。新馬のときから乗せてもらって、よくなっていく過程も知っていたので、そのころと遜色ない状態だったので、上手く乗れれば、と思っていました。ぼく自身も、また乗せてもらえるよう頑張ります」
そう言って笑みを見せた石橋の、馬の能力と操縦性に対する信頼が、道中の我慢につながり、末脚を爆発させることができたのだろう。
激戦区の古馬中距離戦線に、また楽しみな馬が現れた。
(文:島田明宏)