先週末、調教の閉門を待って辻野厩舎へ。お目当てはGIII
マーメイドS(20日=阪神芝内2000メートル)への出走を予定している
ロータスランドだ。目下1勝→2勝クラス(
須磨特別)を連勝中。格上挑戦とはいえ、牝馬限定のGIIIなら楽に突破してくれると考えての訪問だったのだが、トレーナーからの第一声は「もはやどこに使うかわかりません。自己条件(
垂水S)だけでなく、
米子Sという可能性までありそう」と出鼻をくじくもの。もっとも相手関係などを考慮しての発言ではなく、単純に除外されるケースを心配したもので、
マーメイドS出走に関しては前向き。それを聞けただけでもホントに良かったと勝手に胸をなで下ろした次第である。
「知っているとは思うんですけど、転厩してくるにあたって装蹄師さんを替えたんですよね。ずっと爪を痛がっていて、本当のパフォーマンスができていないなと感じてましたから」
さすがは調教助手時代はもちろん、技術調教師になって以降も在籍し続けただけあって、元角居厩舎の馬に関しては知識量と説得力が違う。そして、そのわずかな変更が以前との大きな違いを生んでいる――。
辻野厩舎への転厩初戦となった前々走。最終追い切りが坂路4ハロン57.1-13.3秒となめ切った数字(失礼?)だったため、爪の不安が再発したと危惧したのだが、トレーナーの返答は「いや、単に“置きに行った”だけ。この程度の調教でも1勝クラスは勝てる。そう思ってますから」。
この一戦を“予定通り”楽勝すると、前走の1週前はウッドで併せ馬を敢行。今度は宣言通りの“ちゃんとした”追い切りをしたことで、昇級を感じさせない好パフォーマンスを披露した。そして、それがまだ上限と思わせないところが、この馬のすごさでもある。
「人間でも同じでしょうが、どこかに痛いところがあると体を使えない。現在はそういうところがないので、しっかりと負荷もかけられますし、馬体の張りや毛ヅヤまで変わってきている。今回の1週前は攻め駆けする
エターナリー(古馬2勝クラス)と併せ馬をしたんですけど、あの馬でも相手になりませんでした(ウッドで2秒以上も追走しながら馬なりで2馬身先着)。ウチの厩舎で今の
ロータスランドの相手ができそうな馬となると、もう
キセキくらいしか残ってません。実際にそんなことをしたら、とんでもない時計が出てしまうことになりますが…」
辻野調教師は苦笑いしながらも、現在の充実ぶりにあり余る手応えを感じている。
陣営が想定していたハンデは53キロ。格上挑戦馬としては“見込まれた”レベルだが、これには理由がある。
「前走で負かした
ジュンライトボルトがその後に(
鞍ケ池特別→
むらさき賞と)連勝してオープンに行っちゃいましたからね。それだけでなく、角居厩舎時代の最終戦になった3走前の勝ち馬(
リアンティサージュ)も現在はオープン馬だし、デビュー2戦目のもみじSの勝ち馬は
ラウダシオン、4戦目の
早苗賞は
バビット。この馬が2着した時の勝ち馬はみんな出世しているんですよ」
つまり“隠れオープン馬”であることをハンデキャッパーが認識しているのではないかと考えていたため。もっとも、53キロはハンデ戦へと施行条件が変更された2006年以降で7勝。最も勝っている斤量なのである。さらには騎乗予定の藤岡康は
マーメイドSで6戦3勝を挙げる“ミスター・
マーメイド”で、勝った3勝はすべてハンデ53キロ(逆に3敗は53キロではなかった)。見込まれたハンデは逆にフラグが立った証明になるはずだったが…。
発表されたハンデは想定より1キロ軽い52キロ。まあ、ハンデは軽いに越したことはないってことで結局は買うんですけどね(苦笑)。
(栗東の本紙野郎・松浪大樹)
東京スポーツ