京都競馬場の改修、東京五輪期間中の2場開催などの余波を受け、例年より日程を前倒しして行っている第3回小倉開催。その期間中の重賞は小倉とはマッチしない名称のレースばかり。過去の傾向を探って結論を導き出す“データ派”に対する嫌がらせともとられかねないこの番組編成は、これから先の10年の過去成績に“21年は小倉”の注釈を付けざるを得ず、またデータ傾向そのものにも大きな影響を与えてしまうかも。まあ、そんな先の心配は置いといて、まずは間近に迫ったレースとどう向き合うべきかを考えなければ…。
GIII
プロキオンS(11日)は例年の中京ダート1400メートル(昨年は阪神施行)から小倉ダート1700メートルへと舞台変更。もはや別物のレースになってしまった。
そもそもダート1700メートルという条件そのものが“亜流”のイメージを拭えない。ダート1800メートルのレースが組めない小回りコースでは数多く施行されているおなじみの設定であるにもかかわらず、クラスが上がるにつれてそのレース数は減少。現在、
中央競馬のダート1700メートルで定期的に行われている重賞は札幌の
エルムS1鞍のみだけに、その比率からしてゆがみが生じることは致し方ないのだろうが…。
ダート1700メートルに特化した能力を磨くことによって勝ち上がりを決めた多くの馬たちは、昇級するごとに活躍の場を徐々に失い、果ては適鞍のほとんどないクラスをさまようことになる図式が成り立ってしまっている。となれば偶発的とはいえ、
プロキオンSがダート1700メートルで開催されることが、まさに僥倖ともなり得る馬が存在するわけだ。
では出走予定馬で距離、コースの変更を最もプラスに転じられる馬は? おそらく
ウェスタールンドではなかろうか。
3年前のチャンピオンズC2着に象徴される豪快な追い込みのイメージを抱く方も多いだろうが、実は隠れた小回りダート1700メートル巧者。管理する佐々木調教師は参戦を決めた経緯をこう明かす。
「
プロキオンSがいつも通り1400メートルだったら? それは無理っていうか、そもそも使わないよ。テンからついていけないだろうから。でも小回りの1700メートルなら仕掛けのタイミングさえ間違わなければ大丈夫だろうし、そのあたりはジョッキーもよく分かってくれている。実際、小倉でも勝っているからね」
振り返れば、初めてのダートへの出走となったのが6歳夏、函館1700メートルを舞台にした2勝クラス(津軽海峡特別)。実に約1年半のブランク明けにもかかわらず、他が止まって見えるほどの末脚を駆使して突き抜けたシーンは衝撃的だった。その1か月後には小倉へと転戦して、やはり1700メートルの3勝クラス(薩摩S)を楽々と連勝。その後は爪不安や骨折のアク
シデントなどがありながらも、強敵相手に芝なみの切れ味を武器に勝負する
スタイルで個性を磨き続けてきた。
「(6か月半ぶりの)今回はかなり体重を増やしての帰厩だった。1週前の時点でプラス10キロ…いや、まだもう少しあるかな。今週の追い切りと輸送でどのくらいまで仕上がってくるかがカギになるだろうね」
佐々木調教師は舞台設定、相手関係よりも、自身の仕上がりが最大の壁になるとみているが…。
実は過去にも同じような状況を克服している。久々ながらダート1700メートルの条件を求めて参戦した昨夏の
エルムSではプラス8キロでの出走ながら2着に食い込んでみせた。当時の最終追い切りは札幌ダートで馬なりの調教メニューとなったが、今回は普段通りの栗東坂路で思うような調整を行えるとなれば、きっちり間に合わせてくる公算大。
ウェスタールンドの爆発的な末脚を、久しぶりに小倉で堪能しようではないか。
(栗東のバーン野郎・石川吉行)
東京スポーツ