“勝負の世界”に身を置いているトレセン関係者は、ほとんど無意識のうちにゲン担ぎをしていたり、縁起のいいものにひかれる傾向が一般人より強い気がします。その最たるものが車のナンバープレート。「1」「7」「8」といった数字のまあ、多いこと!もちろん、偶然ではなく、指定して選ぶそうです。そんなトレセンだからでしょうか?谷厩舎に入厩したある2歳馬は、行き交う厩舎の方々にやたらと褒められます。
「めちゃくちゃいいゼッケンやな」
「これは出世するわ」
「末広がりの極みやん」
それもそのはず。
コヨイノツキ(牡=
父アドマイヤムーン、
母キタサンオウシャン)は「888」と何とも縁起のいい調教ゼッケンを身に着けているんです。
「すごくいい名前だよね。オーナーは岡浩二さん。
ヨカヨカの縁もあって、僕が担当させてもらえることになったのかな」
そう言って
コヨイノツキを紹介してくれたのは川端強助手。ええ、「九州産の星」
ヨカヨカの担当者さんでもあります。
「僕は谷厩舎の前に鹿戸幸治厩舎で働いていたんだけど、この子が入厩してくる前夜、幸治先生が夢に出てきてね。腕を組みながら“
ヨカヨカは俺が乗って調教する。早く鞍を着けろ!”って言われて、めちゃくちゃ慌てながら馬装したところで目が覚めた。なんか引っ掛かって、清史君に
コヨイノツキと夢のことを話したら、“俺、その子のお姉さんに調教つけてたわ”って言うんだ」
清史君とは、鹿戸幸治元調教師の息子さんで、今は梅田厩舎の攻め専をされている鹿戸清史助手。
コヨイノツキの姉
キタサンアマゾンは梅田厩舎で走っていた馬なんですって。「だから幸治さんが夢に出てきたのかなあ…なんて強引過ぎかな。でも、久々に幸治先生にビシッと言われて、身が引き締まった思いがしたよ」と川端助手は懐かしそうに振り返ります。
鹿戸幸治調教師はとても男気のあるすてきな方だったそうで、「僕の担当馬ではなかったけど、
サムソンビッグっていう馬がダービー(1994年)に出たとき、一緒にパドックを引かせてもらってね。あの
ナリタブライアンが勝ったダービーだよ。ものすごい盛り上がりで、若かった僕にとっては一生忘れられない経験になったし、いつか自分の担当馬でこの舞台に立ちたいって夢をもらえた」
そんな恩師でもある鹿戸幸治調教師が夢に出てきて“喝”を入れてくれたのは縁のある
コヨイノツキのおかげ?この話だけで終わってしまってはただの
スピリチュアルかぶれになってしまいますが、
コヨイノツキは調教ゼッケン「888」だけでなく、馬っぷりも他厩舎の方から褒められるのだとか。さらには性格面も競走馬として恵まれたものがあるそうです。
「まだ強い調教をしていない今の段階でも、前に馬がいたら必死で追いかけようとするし、後ろから馬が来たら抜かせまいともする。反応が良くて、勝負根性がある馬だね」(川端助手)
ちなみに入厩してから1週間ほどで合格したゲート試験は、前日の練習では一番遅くてどうかと思ったそうですが、試験当日はまさかの最速だったとか。「前日に1馬身置かれていた相手がついてこれないくらいの速さで出たのはびっくりだよ」と川端助手はその学習能力の高さにも手応えを感じています。
今は記者の間というよりは、馬乗りの方々の間でひそかに話題になっている感じですが…。
コヨイノツキが調教ゼッケン「888」通り、末広がりの活躍をしてくれますように!って願わずにはいられません。
(赤城真理子)
東京スポーツ