スピード型の
トロワゼトワルが連覇した流れに従えば、今年のGIII
京成杯AH(12日=中山芝外1600メートル)は絶対的な速力を誇る3歳馬
グレナディアガーズの先行押し切りが最有力となるのだが…。当方がこのレースに抱くイメージは実は真逆だ。
2015年
フラアンジェリコ→16年
ロードクエスト→17年
グランシルク→18年
ミッキーグローリーと、いずれも中団以降からの差し、追い込み馬が勝利。特に担当厩舎の
フラアンジェリコの直線ブッコ抜きの映像は鮮烈で、「
京成杯AH=差し競馬」の印象がむしろ強い。
さらに近年は「エアレーション」(芝の生育やクッション性を高めるための馬場管理作業)という言葉が一般的になり、その影響で「開幕週=前残り」という単純な図式にはならなくなった。秋の中山開催はエアレーションによる「差し有利傾向」が話題に上ることが多く、これもまた差せるイメージを確実に増幅させている。
というわけで、今年の
京成杯AH(12日=中山芝外1600メートル)でどんな豪脚を披露してくれるのか、大いに注目しているのが
アカノニジュウイチだ。目下5戦連続で最速上がりをマークしているように、その決め手はオープンでも十分に通用する。一方で今回の最大の肝は「マイルへの対応」となるだろう。普段の追い切りでも向正面ではかかり気味で、鞍上が必死に抑え込むことが定番に。そんな気性面を考慮してここ3戦は1200メートルに距離を短縮、3→1→1着と結果を残してきた馬だからだ。
「前走(
テレビユー福島賞)は小回り福島の内枠(2枠3番)。後手に回ったら簡単ではないだろうなと思っていたら、実際に後手に回って…。それでも勝ち切ってくれたのだから、クラスの壁を感じさせない、強い競馬だった」
尾関調教師が「あの内容ならオープンでも」と手応えをつかむのも当然。電撃戦で新境地を開き、ス
プリント重賞へ挑戦する青写真が出来上がったように思えたのだが…。トレーナーは距離を延ばし、マイル路線にかじを切ることをあえて選択した。それは「本質的にはス
プリンターではない。騎乗したジョッキー(横山典)も同じ感触なんだよね」との見立てに基づくものだ。
振り返れば、
クイーンC(東京芝1600メートル)4着時に
マジックキャッスル(2着)と、
スイートピーS(東京芝1800メートル)3着時には
デゼルと接戦。その走りは確かにス
プリンターが残せる実績ではあるまい。そう、調教や近走で見せている走りは短距離向きの印象でも、陣営の感触やかつて見せていた走りはそれとは逆のものなのだ。
4歳夏を終えた時点で9戦とキャリアも浅く、
アカノニジュウイチの“正体”をまだつかみかねているのが正直なところ。久々のマイル戦で名手・横山典の手綱さばきを味方に、どんな走りを見せてくれるのか、まさに見逃せない一戦となりそうだ。
(美浦の両刀野郎・山口心平)
東京スポーツ