小田切有一氏の所有馬は、どれも耳に残る馬が多い。時には「珍名」というワードでひとくくりにされてしまうこともあるが、
オークスを勝った
ノアノハコブネ、
高松宮記念を制した
オレハマッテルゼ、重賞2勝の
エガオヲミセテなど、ビッグレースを勝った馬は洒落たネーミングが多かったりする。
きさらぎ賞を勝った
ヒコーキグモにしても昨年の3冠馬
コントレイルと同じ意味と考えれば、う〜む洒落ている。ちなみに個人的なナンバーワンは
ロバノパンヤ。きっちりオープンまで出世したのだから、水ダウ的に言えば「説立証」である。実はこの洒落たネーミングと感じられるかが大舞台で活躍できるかの分岐点なのかも。
で、お題となるのがGIII
サウジアラビアRC(9日=東京芝1600メートル)にエントリーしている
ウナギノボリだ。現段階では「珍名」のくくりに入ってしまいそうな気もするが、実は現在の
ウナギノボリは「2代目」で、2014年に「初代」
ウナギノボリがデビューしている。もちろん、オーナーは小田切氏。もしかして期待値
マックスの渾身ネーミングだったりするのか? もっとも2代目を管理する音無調教師は「へえ〜ホント? それは知らなかったわ」と、にべもない。だが、知らないのも無理からぬところで、初代は美浦の高橋祥厩舎の管理馬。(勝ち上がる寸前まではいったのだが)4戦未勝利の成績だった。
「母がワナで、祖母が
メロンパン? どちらもウチにいた馬やんか。まあ、今回の
ウナギノボリの母(
ノンキ)もウチにいた馬やからな。
ノンキにしてもそうなんだけど、小田切オーナーの馬は名前の印象が強くてさ。その馬自身がどんな馬だったかは、あまり覚えていないんだよな(苦笑)」
なかなかの衝撃発言。個性的なネーミングセンスは名トレーナーの記憶力にまで影響を及ぼしてしまうのか。もっとも、ちょっと掘り下げたところで、それなりに記憶が戻ってきたようで…。
「
ノンキは
サンデーサイレンス産駒で期待はしていたんやけど、勝ち星は2つだったっけ? 繁殖に上がってからも結果がなかなか出なくてさ。で、(白老
ファームから)同じ日高の中原牧場に移動したら、ウチにいた
ビックリシタナモー(
JRA5勝)が出たわけ。攻め馬では目立たない馬やったし、乗り味も大したことないと聞いてたから、そこまで期待もしていなかったんだけどね。それは
ウナギノボリにも言えることで、デビュー前は心配事のほうが多かったんだけど、レース(中京芝1400メートル新馬戦1着)では予想以上に走ってくれた。父
ドレフォンが良かったのか、サンデー肌のおかげなのか…。短いところがいいと思って使ったのに、あがってきた和田(竜)は“1400メートルでは距離が足らない”って(苦笑)。なのでここに使うんだよ」
コマンドライン、
ステルナティーア…。今回の相手はあまりに強く、馬名の話題性だけで通用するようなレベルではなさそうだが、陣営もつかみきれていない“意外性”が発揮されるようなら…。音無師いわく「兄貴の名前のような
ビックリシタナモー的な結果になるかもしれんぞ(笑)」。そんな話をしているうちに
ウナギノボリという馬名も、なんだか響きがいいような気がしてきた。
(松浪大樹)
東京スポーツ