今年のクラシック前哨戦で、最もレベルが高かったのは
共同通信杯だと思っている。1着
エフフォーリア(
皐月賞1着、ダービー2着)、3着
シャフリヤール(ダービー1着)、5着
ステラヴェローチェ(
皐月賞、ダービー3着)…。上位陣の顔ぶれを見るだけでも、いかに濃い内容だったかがお分かりいただけるだろう。
この世代トップが揃った一戦で2着と奮闘したのが
ヴィクティファルス。
皐月賞馬、ダービー馬がともに不在という“異例の
菊花賞”(24日=阪神芝内3000メートル)なら、主役を張っても驚けない一頭だ。
にもかかわらず、下馬評では注目度がかなり低い。春2冠以降の成績(
皐月賞9着→ダービー14着→
セントライト記念5着)を考えれば、それも仕方ない?いやいや、ちょっと待ってほしい。近3走の結果だけで本当に見限っていいのか…。
「春は関東への輸送が続きましたから、馬も苦しかったんだと思います。前走にしても、こちらのイメージではプラス6〜10キロの間で出られると思っていたんですけど、結果的には増減なしと輸送で想定以上に体が減っていた。そう考えると関東への輸送がないのは相当プラスでしょうね」(
池添学調教師)
ヴィクティファルスが関西圏のレースに出走するのは、実に昨年11月の阪神芝外1800メートル新馬戦(1着)以来。
共同通信杯で一戦級と互角以上に渡り合った実力馬が、近場の阪神で馬体を減らさずに臨めれば…。逆転戴冠のミッションも決して不可能ではないように思える。
「ここにきて“あ〜成長したな”と感じるところが出てきたんです。毎日乗っている感じなので、こればっかりは言葉で伝えにくいのですが、最初の常歩(なみあし)の感じが“あ〜いいなぁ”と。そこは前走時にはなかった部分なんですよね」
トレーナーはこの中間の小さな変化にも手応えを感じている。もちろん、
母ヴィルジニアに似たピッチ走法で、胴の詰まった体形をしているのは百も承知。決して長距離志向と言える馬ではないが、それでも「ダービーの時は(勝ちに行くため)ポジションを取りに行って、最後に息切れしましたが、坂を上がるまでは見どころがありました。そして前走の
セントライト記念の場合は我慢の競馬はできていましたからね。3000メートルの
菊花賞でも、この馬のリズムで出たなりでジッとしている競馬ができるようなら」と前向きな言葉が最後まで続いた。
調教でゆったり走らせること、競馬で道中は楽をさせて乗ること。距離克服に向けて積み重ねてきたことが、
菊花賞で花開くことを願ってやまない
チャレンジャー応援派の記者である。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ