「
皐月賞が最後かなと思っていたけれど、
菊花賞にも出られるとはね」と柔らかな表情で
アサマノイタズラを見つめながら語るのは、滝口厩務員。
手塚厩舎で数々の活躍馬に携わり、厩舎初
JRAのGI制覇(11年
朝日杯FS)となった
アルフレードも担当したベテランだ。「以前所属していた佐藤林次郎厩舎が解散となって、それで手塚厩舎にお世話になることに。それから10年ぐらいたって、
アルフレードが朝日杯を勝ってくれた時はうれしかったし、やっぱり一番思い入れがあるね。あとは重賞まであと一歩だったけど
パールシャドウ(5勝)もいい馬だった」
その滝口厩務員は来年3月で定年を迎えるが、最後のクラシック・
菊花賞(24日=阪神芝内3000メートル)に担当の
アサマノイタズラを送り出すことになった。「厩舎で初めて会った時は、まさかここまでの馬になるとは思わなかったけど、どんどん力をつけていくのを感じた。特に
スプリングSの時は、すごく状態も良くて、これなら勝ち負けできると思っていた」
結果は…ゴール寸前で
ヴィクティファルスの強襲に遭ったものの直線力強く抜け出し、7番人気の低評価を覆し2着に善戦した。
クラシック登録をしていなかったため追加登録料を払い、挑んだ
皐月賞は最下位。次走の
ラジオNIKKEI賞も12着と不本意なレースが続いたが、「うまくかみ合わなかったけど、決して力負けとは思ってはいなかった。それに休ませたことで、馬がずいぶん良くなっていたから、
セントライト記念でも十分やれるとは思っていたよ」(滝口厩務員)。
その言葉を証明するように、後方で脚をため、直線外に持ち出されると豪快に差し切りV。
ニュースタイルでの巻き返しに「ああいう競馬になるとは少し驚いたけど、馬のリズム重視で運べば、あれぐらいやれる力があることが改めて確信できた」と振り返る。
ただ今回はGI。好走するにはさらなる上積みが必要になるが、「前走後少し楽をさせたけど、その後は順調。1週前追い切りはジョッキーが乗って、しまいビッシリ追って反応面も良くなっていた。体に張りも出てきて、デキは前走より良くなっているよ」。状態面の手応えは十分だ。3000メートルの距離についても「前走のように馬のリズムに合わせて運べれば、スタミナは心配ない。以前は周りを気にするようなところもあったけど、今はだいぶ大人になってきたし、輸送でイレ込むこともないからね」。
滝口厩務員にとって
菊花賞は“初出走”。「最初で最後の集大成だね。ただ、担当する馬に合わせて故障がないようしっかりケアしてあげることは変わらない。それがこの仕事で一番大事なことだから。いい状態でしっかり送り出したいね」と穏やかな表情で言葉を結んだ滝口さん。相棒の連続の大仕事を期待せずにはいられない。
(美浦の悪戯支持野郎・松井中央)
東京スポーツ