「
天皇賞(秋)・G1」(31日、東京)
これまで数々のタイトルを積み重ねてきた
藤沢和雄調教師(70)=美浦=だが、最も手にしたのが5頭で6勝を挙げる秋盾だ。22年2月末で定年となる名伯楽にとって、21年の
グランアレグリアは最後の挑戦。稀代の名トレーナーの過去の熱闘を振り返る。
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朝日杯3歳S(現
朝日杯FS)を制して世代のトップに立ち、ス
プリングSを勝っていざ
皐月賞へ-。しかし、直前に右後肢の骨折に見舞われてしまう。日本の競馬界を席巻しつつあった、
サンデーサイレンス産駒の2世代目にあたる
バブルガムフェロー。春の2冠を棒に振ったのは痛恨だが、思いのほか回復が早かったのは幸いだろう。復帰のメドが固まると、藤沢和師は秋の天皇賞を大目標にすると発表した。
父譲りのスピードを最も生かせる中距離。府中自体も歓迎だった。「左回りが得意。斤量の恩恵が2キロある上に左回りを走らせてもらえるので、すごくワクワクした記憶があります」とトレーナーは当時を振り返る。
タイキブリザードとBCクラシックに挑戦する岡部に代わり、鞍上は蛯名が務めた。「蛯名君にはレース前に『受けて立つ競馬をしてもいい。それくらい強い馬だよ』と言った記憶があります」。3番手から正攻法の競馬で
マヤノトップガン、
サクラローレル、
マーベラスサンデーといった歴戦の古馬を蹴散らし、史上初の3歳馬Vを達成。蛯名にとっても初めてのG1タイトルとなった。
師はこの勝利を遠征先のカナダで知ったという。「帰りの飛行機で、テレビから天皇賞を制したニュースが流れてね。“この馬は私が管理しているのだよ”と、みんなに言いたかった」。
ブリザードが13着に敗れた直後だけに、喜びもひとしお。自身最初の秋盾制覇は、非常に感慨深いものとなった。
提供:デイリースポーツ