葉牡丹賞(12月4日=中山芝内2000メートル)といえば、かつて
レイデオロがこの1勝クラスを
ホープフルS(翌年からGIに)、そして
日本ダービーを制する足掛かりにしたことで知られる。もっとも、
ホープフルSへはレース間隔があまりないため(当時の
レイデオロも
皐月賞がぶっつけになる誤算が生じた)、同レースの
ステップというよりは、翌春の
皐月賞を見据えたうえでの力試しに最適な一戦といった認識のほうが関係者の間では色濃いように思う。ゆえに2歳の中距離戦にしては出走馬が結構、集まるのではないか。
今年の登録馬も16頭と盛況な中、当コラムが注目したのは
サインオブサクセス。9月に当舞台の新馬戦を勝ち上がったこの馬、東京の連続開催を見送り、この一戦に備えたあたりに陣営のブレのない戦略が見て取れる。
「新馬戦を勝った舞台を目標に調整してきました。初戦は3、4角での脚のたまり具合がいい感じでしたね。だからこそ、いい脚でシュッと抜け出せたんだと思っています」(伊藤圭調教師)
デビュー前から厩舎の大将格である古馬オープン・
ゴールドギアと併せて互角の動きを披露するなど、素質の片鱗を見せてはいたが、ゲート練習ではふざけて尻っぱねをしたりと子供っぽさが抜けず、送り出す際はまだ半信半疑だったという。ところがレース当日になると雰囲気が一変した。
「装鞍所から自信に満ちあふれ、パドックでも堂々と歩いていた。周囲に“僕を見てください”と言わんばかり。これなら大丈夫と思ったし、レースでも走ってくれた」と振り返る指揮官は「馬体重は同じか、少し増える程度だと思いますけどね。この中間に放牧を挟んだことで気性はさらに成長した。今は段階を踏みつつ、上のステージに上がっていけたらいいですね」と来春に向けてじっくりボルトを締めていく構えだ。
一方でデビュー前から
サインオブサクセスの調教に“主戦”として騎乗しているのが所属の永野。先週までに
JRA25勝を挙げ、同期の小沢(同27勝)と新人リーディングでしのぎを削るホープだ。中間も週中の速い追い切り時の背中には常にその姿があった。
「馬の状態はすごくいいですね。体の使い方が上手になって、さらにしっかりとしてきた感じです。もともと乗り味というか、背中の感触がすごくいい馬。まだ成長途上の段階ですが、新馬の時と比べれば格段に良くなっています。僕自身、この馬にはとても勉強させてもらっているんです」と永野は目を輝かせる。レースではデビュー戦に続き横山武が手綱を取るが、「いつかはレースでも乗ってみたい」と正直な気持ちも話してくれた。
今は人馬ともに何でも吸収できる時期。互いに成長し合えるタイミングだからこそ、濃密な時間を共有できている。
サインオブサクセスが将来、厩舎の看板馬になり、その背中にはたくましさを増した永野。そんなレースが見られることを想像するのも楽しいものだ。
(立川敬太)
東京スポーツ