武幸四郎の管理馬に
武豊が騎乗する兄弟タッグでのGI挑戦。そして注目の新種牡馬
シルバーステートの産駒が父の成し得なかった悲願のGIタイトル奪取へ。阪神ジュ
ベナイルF(12日=阪神芝外1600メートル)では、そんな感じで
ウォーターナビレラ関連の
トピックスには事欠かない。
もちろん、実績も申し分なし。デビューから無傷3連勝の内容はいずれも前々での立ち回りを見せての勝利。抜群のレースセンスを武器に、2歳女王に最も近い存在として何も問題ないのだが…。その実績や話題性とは裏腹に、予想欄にズラッと◎が並ばないであろうところが競馬の面白さ。いったい、なぜなのか?
競馬を教えながら成長を促していく必要がある2歳戦において、巧みなポジション取りでレース運びができる利点は計り知れないほど重要であることは言うまでもない。一方で、来年のクラシックを見据えるうえでは、経験値を重ねることで強くなる馬もいるという期待感から、少々粗削りではあっても伸びシロが大きいと思われるスター候補生ほど、将来性も含めた高い評価を与えられる傾向にあるのだ。
完璧なレース運びでも少しの着差で勝ち上がる馬の印象は相対的に地味なものとなり、すごみのある競馬をした高額の良血馬のほうが「大レースを勝利するにふさわしい」とするストーリーが生じる構図である。これこそがこれまで勝ち続けても
ウォーターナビレラが1番人気にはならなかった理由であり、今回にしても「GIを勝つには大物感に欠ける」と評するむきへとつながっているのではないだろうか。
レース巧者であるがゆえに、現段階ですでに完成形を迎えたとする評価は果たして
ウォーターナビレラの「本質」をとらえたものなのか? 競馬にいってのセンスの良さを認めながらも、武幸調教師はちょっと違った見方を示してくれた。
「札幌でデビューしたころは脚さばきに硬さが見られたので、ダート調教ではちょっと難しいところもあったんだ。ただ調教を進めても食いが落ちないことがこの馬の最大の長所なんだと思う。それは今でも変わりなくて、トレセンに戻ってから調教の負荷を強めても、カイバがあがるようなことはなかったし、それによって馬体をたくましく見せるようになり、成長を感じている」
レースで見せる速さと強さを裏打ちする確かな要因が調整過程にあることを示すと同時に、まだ未完成な部分、つまり課題も教えてくれた。
「返し馬の後で待機所で輪乗りをしている時間が長いとイライラした感じになって、ゲートの中でもソワソワしだすんだ。そこさえクリアしてスタートを決めることができれば、上手な競馬はしてくれるだろうし、GIでもチャンスはあるとみている」
そう、着実に
ステップアップしながらGIへ臨む中でも、まだまだ伸びシロは十分にあるのだ。
「派手な勝ち方をする馬より、いつもちょっとの差で勝つ馬のほうが実は強い」
ひと昔前はこんな声がよく聞かれたもの。単なる話題先行タイプでもなければ、伸びシロに乏しいレース巧者でもない。阪神JFは
ウォーターナビレラが真に強い馬であることを証明するレースになる気がしている。
(栗東のバーン野郎・石川吉行)
東京スポーツ