年末の風物詩となっているグランプリレース。2021年の有馬記念が26日の15時25分に発走する。今年はファン投票1・2位に支持されたエフフォーリアとクロノジェネシスのほか、GI馬6頭が参戦。それ以外にもGI好走馬、重賞勝ち馬が多数揃う注目の一戦となった。ここでは、独自の「PP指数」を駆使し、「負けない女」の異名をとる女性予想家・山崎エリカ氏の展望をお届けする。

◆今年もハイペースになる条件は揃っている

　有馬記念が行われる中山芝2500mは、外回りの3コーナー入口からスタートし、最初の4コーナーまでの距離は192m。最初のコーナーまでの距離が短く、逃げ馬が最初のコーナーをゆったりと入ること、さらに1〜2コーナーの急坂を2度も超えるタフなコースであることから、スローペースが発生しやすい。

　実際に追い込み馬のオルフェーヴルが1番人気に支持された2011年、ゴールドシップが1番人気に支持された2014年は、逃げ馬不在の影響もあり、同日の2勝クラス・グッドラックハンデよりも遅い決着タイム、いやゆる“どスロー”が発生。同年の宝塚記念を圧勝したゴールドシップは3着に敗れ、オルフェーヴルは生涯でもっとも辛勝のGI勝ちと苦杯を舐めることになった。

　また、中山芝2500mの多頭数は特に最初のコーナーで外を回ってしまうと終始外々を回るリスクが生じ、その後に内目に進路を取るにしても、仕掛けどころに制約を受ける。このため外枠よりも内枠が有利というのも特徴だ。ただし、それは馬場の内・中・外がフラットであることが条件であり、昨年のように馬場の内が荒れ、外差し馬場になると、当然、外枠の馬にもチャンスが出てくる。

　逆にハイペースになったのは、過去10年ではアエロリットが逃げた2019年の一度のみ。この年は同馬が外枠に入り、内枠の馬が抵抗を見せたのもあったにせよ、5F通過60秒越えはあたりまえ、平均でも61秒台半ばで入る有馬記念としてはレアな5F通過58秒5の超絶ハイペースとなった。

　アエロリットは戦前の段階から陣営が「逃げたい」とコメントしていたが、序盤から無理な脚を使わせて、まさかの大逃げの形。鞍上は陣営の指示に頑なに従ったのかもしれないが、暴走レベルの逃げを打ってしまったのは、前週から馬場が一変したことが大きいと見ている。前週までは前と内が有利だったが、有馬記念当日は馬場の内側が荒れ、外差し馬場に変貌していた。

　さて、今年の有馬記念はどうなるか？ 前週まで前と内が有利という点では2019年とは変わらない。個人的には先週は火曜日から木曜日にかけて雨が降り、土曜日は稍重スタートし、内から馬場が乾いていったことが内と前有利の傾向に拍車をかけていたと見ている。つまり、今週は様相一変、外差し馬場ということも十分に考えられるということだ。最終決断は有馬記念と同距離で行われる土曜日のグレイトフルSや有馬記念同日のグッドラックハンデなどを見て下したいが、良馬場スタートの今週は先週ほど内を前が有利ではなくなっているはず。

　そのうえで逃げて開眼したパンサラッサが逃げ宣言。同馬は2番枠。今秋の福島記念を前半5F57秒3-5F61秒9の極端なハイペースで逃げ切っているだけに、今回も前半からリードを奪いに行く可能性が高い。また、すぐ外の5番枠には緩みない流れを先行して、阪神大賞典圧勝、春の天皇賞2着と結果を出したディープボンドがいるので、同馬がペースを引き上げなければ、ディープボンドが捲りに動いて行くだろう。ディープボンドはキセキよりもテンが速く、キセキのようにトップスピードを長く維持できる馬である。今年もハイペースになる条件は揃っている。

　これによって展開の後押しがありそうなのは、ハイペースの2020年の宝塚記念を圧勝したクロノジェネシスや、成長力があった場合の追い込み馬ステラヴェローチェだろう。クロノジェネシスは昨年の有馬記念も優勝しているように、スローペースだったとしても対応できる。また、超穴馬なら有馬記念を最下位人気で2着と好走したアドマイヤモナーク的なユーキャンスマイルが面白い。アドマイヤモナークはダイヤモンドS勝ちのあるステイヤーだが、ユーキャンスマイルも同タイプである。

(文=山崎エリカ)

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