ゴールドシップ好きだった記者にとって、
札幌2歳Sで産駒重賞V第1号となった
ブラックホールは馬券でもお世話になった忘れられない馬である。しかも、美浦担当になって右も左も分からない新米のころから、いつも時間を割いて、ていねいに取材に応じてもらっている相沢厩舎の所属馬。思い入れは強かったが、昨年3月の調教中に故障で引退してしまった。
さらなる活躍を期待していただけに残念だったが、2つ下の半妹
ライラックが同じ相沢厩舎に昨秋入厩。それからは毎週欠かさずチェックしてきた。稽古ではフットワーク、反応とも常に目を引く存在で、相沢調教師も新馬出走時「相手は強いけど、この馬の能力なら勝てるはず」。この力強い言葉を信じ、単勝大勝負…兄に続いて的中させてもらっただけに、この一族には頭が上がらない。
一方、次走で男馬相手、しかも関西遠征の
京都2歳Sを選択したのには驚いた。このチョイスについて相沢調教師は「ミルコ(デムーロ)が走りますって言ってくれたし、あのクラスのジョッキーが言うんだから調教師が言うより説得力あるでしょう」
記者もこれを聞いて強力関西馬相手でも勝負になると思ったが、ゲート入りをごねて、誘導員のムチやロープに何度も尻っぱねをし、テレビで見ているのがつらくなるほど反抗の連続。レース前に戦意を喪失してしまった。
「ゲートだけではなく、馬運車にもなかなか乗ろうとしなかったし、装鞍所でも嫌がっていた。
オルフェーヴル産駒の悪い面が出たのもあるが、あの遠征は全てが気に入らなかったんだろうね」と相沢師。
精神面に残った大きな課題――。それだけに回復には相当な時間がかかると覚悟していたが、間隔をあまり空けることなく、
フェアリーSを使うとは予想外だった。
このローテーションについて相沢師は「放牧に出すと、牧場ではゲート練習を含め、いろいろな課題に取り組むことができない。そのため、厩舎に置いてひとつずつ納得させながら徹底的にやってきた。ミルコもこのレースなら乗れると言ってくれたので」と語る。
さらに「ゲートも馬運車も最初はごねて入らなかったけど、ていねいに練習したことで、今は入るようになった。納得してしまえば、引きずることはないし、うまくいっている。賢い馬だね」と課題克服へ手応えを口にしている。
ゲート練習などでストレスも気になるが、「普段はおとなしいし、カイバも食べている。体は増えていないけど、今はこれぐらいでちょうどいい。相変わらず追い切りではいい動きをするし、大みそかにしっかりやったので直前はサラッとにする。前走後にミルコがこんな馬ではないと言っていた通り、普通に走れば結果はついてくる」
ライラックが納得した走りをしてくれることを願い、追跡者としてこれからも応援を続けたい。
(美浦の兄妹追跡野郎・松井中央)
東京スポーツ