昨年のマイルCSで現役を引退した
グランアレグリア。ラストランは後方からメンバー最速の上がり3F32秒7を記録して突き抜けた。これがラストランとは思えない強さだった。
通算成績は15戦9勝で、そのうちG1は6勝。この中で印象に残っているレースを挙げるなら、1番手は20年
安田記念になるのだろうか。最強牝馬と言われた
アーモンドアイに2馬身半差をつけて勝利したレースぶりは衝撃的だった。記者もこのレースを目の当たりにして強さを実感したが、それ以上の衝撃を受け、さらに同馬の強さを感じたのは次戦の
スプリンターズSだ。
舞台は初めての中山で、V実績のない1200メートル。レースは二の脚がつかずに後方の15番手を追走し、4角では馬群の大外を回す大味な競馬だった。記者は4角手前で負けを確信した。これはさすがに無理だろう。ただ、ここからがすごかった。エンジンがかかってから一気に加速し、ゴール前で楽に抜け出したのだ。他の馬が止まって見えたという表現があるが、まさにそれ。しかも追い込みが決まりづらい中山芝1200メートルが舞台だっただけに、そのインパクトはかなりのものだった。分かってはいたことだが、改めてこの馬の強さを実感した。
もうひとつ印象の残っているレースがある。それは21年
天皇賞・秋だ。結果は1着
エフフォーリア、2着
コントレイルに次いで3着。このレースはいろいろと思うところがあった。2000メートルのこのレースを勝てば1200メートル、1600メートルに続いてのG1制覇となり、3階級制覇の偉業を達成することになる。真の強さがある
グランアレグリアならできると思っていたが、ゴール前で力尽きて3着に敗れた。
この日の芝発表は良馬場だったが、レース前に雨が降って湿った状態。道悪を苦手としている
グランアレグリアにとっては決していい条件ではなかった。競馬はルメールが積極的に2番手からレースを進め、直線で伸びを欠いて3着に敗れた。あくまでもタラ・レバの世界である。同じ良でもパンパンの良馬場ならどうなっていただろうか。ルメールがいつも通りの抑える競馬をしたなら…。結果は結果として受け止めるが、いろいろと思うところがあり印象深く残っている。
これまでのレースを振り返ると数々の思い出がよみがえる
グランアレグリア。スピードの絶対値だけなら、過去の名馬を含めてナンバーワンと言っても過言ではない。記者個人としては近年、なかなか存在しなかった記憶に残る馬だった。
(デイリースポーツ・小林正明)
提供:デイリースポーツ