火曜(1日)朝の美浦トレセン。南スタンドでのんびりしていると、
相沢郁厩舎の三尾一之助手が声をかけてきた。
「やぁ。今週の
チューリップ賞は土曜? 日曜? ふ〜ん…土曜日か。よし、しっかりチェックしておくとするか」
相沢厩舎の馬は
チューリップ賞には出走しないのだが、三尾さんが注目するのには理由がある。彼が担当するのは1月のGIII
フェアリーSを制した
ライラック。次走は
桜花賞に出走することが発表されているだけに、
トライアルの
チューリップ賞を意識するのも当然だろう。
おまけに今年の
チューリップ賞は例年以上に粒が揃っている印象もある。近年は前哨戦を使わず、なるべく間隔を空けて本番に臨む“直行ローテ”がトレンドになりつつあり、昨年の
桜花賞は阪神JFから直行した
ソダシが優勝。牡馬部門の
エフフォーリアも
トライアルを使わずに
共同通信杯からの“直行”で
皐月賞馬となったのだが…。
今年の
チューリップ賞には昨年度の
最優秀2歳牝馬サークルオブライフのほか、阪神JF3着の
ウォーターナビレラ、阪神JFで1番人気に推された
ナミュール、2番人気の
ステルナティーアなど、実力馬がズラリと顔を揃えたのだ。
ではなぜ直行ではなく前哨戦を使うのか? その理由を
国枝栄調教師に聞くと「そりゃあ、本番でいい競馬をするためだよ」と明確な答えが返ってきた。
「肉体面や精神面に弱さを抱えているのなら直行ローテの方がいいケースもあるだろうが、
サークルオブライフは体質が強いし、メンタル面でもどっしりとしていて落ち着きがあるからね。休み明けでも動けるとは思うけど、実戦を使った方がより良いパフォーマンスを発揮できると判断しました」
とはいえ関西馬ならともかく、関東馬にとって
チューリップ賞→
桜花賞と連続の阪神遠征は負担が大きいようにも映る。そんな疑問を投げかけると、トレーナーはひとつのプランを披露してくれた。
「予定ではあるけど、
チューリップ賞の後にはそのまま栗東に滞在させることも考えている。輸送を苦にするタイプではないものの、牝馬だし、輸送が続けばナーバスになる可能性もあるから」
これを聞いて思わず「なるほど」と膝を打った。近年は
アーモンドアイや
アカイトリノムスメなど美浦トレセンで仕上げてGIタイトルを手にしてきた国枝厩舎だが、かつては5冠牝馬
アパパネや
マイネルキッツ(
天皇賞・春)で結果を残してきた“栗東滞在”のパイオニア的存在だったからだ。
「
サークルオブライフの良さ? 性格や顔がかわいいのに加えて、レースに行って勝負根性があるのがいいね。まだまだ伸びシロもありそうだけど、現時点の完成度も高い。ここでいい結果を出して、本番につなげたいね」
直行ローテが主流の時代に、名伯楽が“伝家の宝刀”を抜いてまで選択した前哨戦への参戦。現時点では混戦ムードにも映る
桜花賞戦線だが、
サークルオブライフの走り次第では“1強ムード”となる可能性もありそうだ。
(美浦のBE-BOP野郎・藤井真俊)
東京スポーツ