先月20日の阪神6R(3歳1勝クラス、芝内1400メートル)。2013年の
日本ダービー馬にして同年の
凱旋門賞で4着に健闘した名馬
キズナを管理していたことで高名な
佐々木晶三調教師が、
JRA通算600勝を達成した。その
メモリアルVを自身の代名詞とも言うべき
キズナの子どもがプレゼントしたことに縁を感じずにはいられない。
トレーナーが「まさに名前通り、姉御肌だね」と気の利いた言葉で感謝を表した
キズナ産駒
アネゴハダが、もしかしたら
キズナ以来となるクラシックの頂点まで佐々木調教師を連れて行ってくれるのかもしれない。そんな予感に駆られ、
桜花賞トライアル・GII
フィリーズレビュー(13日=阪神芝内1400メートル)を前に意気上がるトレーナーを直撃した。
「7割から7割5分くらいのデキだったけど、あの強い勝ち方。直線で寄られて頭を上げるシーンもあったのに、前が空いたらあっという間。瞬間移動だったよね(笑い)。駐立が良くなったことでゲートもスッと出たし、道中は我慢して脚をため、しまいはビュンと切れた。成長を感じる内容だったね」
ここで時計の針を戻すとしよう。少し硬さが見られたことからダートデビューとなった
アネゴハダだったが、余力残しで後続に4馬身差をつける大楽勝。芝でも十分通用すると判断したトレーナーは小倉2歳S挑戦を決断した。連勝とはいかなかったが、出走2位タイの上がりで3着。芝適性はもちろん、能力は重賞級なのを確信。だからこそ王道路線に打って出たのだ。
ファンタジーSは3角で下がってきた馬をスムーズにさばけず、脚を余しての5着。阪神JFにしても結果9着ながら4角までは絶好位を追走する見せ場十分の内容だった。
アネゴハダの蹄跡を早足ながら振り返ったことで、期待の程は伝わったのではないか。
「GI後ひと息入れて次が3走目。思惑通り良かったころの状態まで持ってこれた」とここまでの順調な調整過程を振り返る佐々木調教師。良かったころとは「ムチムチしていて、はちきれんばかりだった」小倉2歳S当時のことだ。
「賢い馬だからどんどん競馬を覚えていってくれている。もう一段、上があれば
桜花賞でも楽しみになってくるね」と頭の中にはクラシックへの道筋が出来上がっているようにも見える。
走る馬の多分に漏れず「普段はうるさい馬だった」という
キズナだが、競馬に行けば「乗馬のようにおとなしかった」そうだ。このあたりは娘の「
アネゴハダにもしっかりと受け継がれている」。いわゆるオンとオフの切り替えがキッチリできる馬なのだろう。
名伯楽と名馬の“絆”が再びクラシックの高みで輝きを放つのか。まずは前哨戦の走りを楽しみに待ちたい。
(元広告営業マン野郎・鈴木邦宏)
東京スポーツ