桜花賞トライアル・GII
フィリーズレビュー(13日=阪神芝内1400メートル)では
ゼロドラゴンの走りに注目してほしい。
ここまでのキャリアを簡単に振り返ると、新馬戦では3番人気に支持されながら11着に惨敗。ただし、戦前から寺島調教師が「DDSPの気がある」と話していたくらいで、これは致し方ない結果だった。手術明けの未勝利戦を快勝して、続く1勝クラスでも3着に善戦。成績だけ見れば、手術が成功して軌道に乗ったようにも思えるが…。
新たにコンビを組む横山典が1週前追い切りに騎乗した際、併走馬にまたがっていた佐藤助手は、超一流ジョッキーが口にした言葉に感銘を受けたという。
「以前にノドが鳴った経験のある馬は走るまでに苦しい思いをしているから、どうしても構えてしまう。走っている最中も、過去の記憶の影響からか、走りに力みを感じることが多いんだ。だから競馬へどう持っていくのかが本当に難しい。そんな話を典さんがしてくれました」
競馬ではそれなりの結果が出ていても、横山典の感触では普段から馬場入りがうるさかったりするのは、これまでの苦しい経験と無関係ではないのだそう。どこかで必要以上に力んだり、ムキになったり…。そういった面を徐々に取り除いていくことが、
ゼロドラゴンには必要になってくる。
「馬は理解力に乏しくても、記憶力は優れてますからね。なかなか教えたことは理解してくれないのに、過去のことはずっと覚えている。能力は高い馬だから、あとは“この人なら安心できる”って状況を作れれば…」
横山典の教えにより、少しでもトラウマを取り除ければ、持っている能力をより発揮できると佐藤助手は確信している。
横山典といえば、かつて不振に陥った
ゴールドシップと調教からしっかりとコンタクトを取ることで、個性を尊重して信頼関係を築き、復活させたことで知られる。
ゼロドラゴンもまた横山典が懇切丁寧に「走ることは楽しいんだよ」と教えることで、これまでとは違った競馬へのアプローチができるのではないか。
今年に入って
シンザン記念=
マテンロウオリオン、アメリカJCC=
キングオブコージ、
きさらぎ賞=
マテンロウレオとすでに重賞を3勝。先月で54歳を迎えた大ベテランが今なお、第一線で活躍できるのは馬とのコミュニケーションが取れているからこそと改めて思い知らされた次第だ。
ゼロドラゴンがここでどういった走りを見せてくれるのか。もちろん、一発回答が理想ではあるのだが、結果は別にしても落ち着いて、力みが取れた走りができていれば…。横山典に教わったことが確実に効果を発揮している証しとなるだろう。
(難波田忠雄)
東京スポーツ