ここ一番のクラシック、しかもテン乗りともなれば、勝算のある馬ほど調教でのコンタクトは必須要件となろう。デビュー3戦で手綱を取ってきた
M.デムーロから乗り替わりとなる
ライラックの1週前追い切りには新コンビとなる福永が美浦トレセンを訪れ、しっかりとその背中の感触を味わった。いや、その前に「名手」福永を確保できたこと自体に運がある。
年明けの
フェアリーSを勝ってすぐに、
トライアルは使わず、
桜花賞(10日=阪神芝外1600メートル)に直行するプランが決定。一方でデムーロは2歳女王
サークルオブライフの主戦でもあったため、早々とクラシックでの連続騎乗を諦めざるを得ない状況にあった。となると、なるべく早く、なるべくいい騎手を確保するのが
セオリーとなるが、管理する相沢調教師はここで“待ちの手”に出た。
「あえて
トライアルが一通り終わるのを待って探すことにした。そうしたら彼(福永)が空いていて…。あれだけのジョッキーが騎乗してくれるのはありがたい」
焦らずにギリギリまで待って情勢を見極め、最上級の鞍上確保に成功したのだ。福永が昨年暮れの香港での落馬負傷から復帰したのが2月5日。
フェアリーS直後に急いで探していたなら実現しなかったコンビだ。
さて、本題の福永の感触を伝えねばなるまい。1週前追い切りで
ライラックの背中から降りてすぐに相沢調教師と言葉を交わし、その直後に取材に応じた鞍上は「ゴールを過ぎてからも余裕があって、いい動きでした。それに追い切った後の雰囲気がいい。落ち着いているし、息の入りも良かった。調子の良さが感じられましたね。
休み明けは全く問題ないタイプ。小さいけど、きゃしゃな感じがしないというか、非常に
バランスのいい、質の高い走りをする」とまずはその素材に高い評価を与えた。
ライラックは2戦目の京都2歳Sに向けて美浦を出発する際に馬運車に乗るのを極度に嫌がり、大幅に時間を要したほか、現地入りしてからも落ち着きがなく、初戦から10キロ減の馬体での出走となった。これが8着大敗という結果にも影響しているとなれば、今回も同じ阪神遠征になるだけに気になるところだが…。
「気性に難しいところはあるみたいだけど、前回は落ち着いていたみたいだし、この中間も同じように来ていると聞いている。乗った感じからも全く心配はしてないよ。ゲート裏で
テンションが上がる面も厩舎でケアできているようだからね。いいスタートさえ切れれば、流れに戸惑うことはないだろうし、極端なレースをしなくても対応できるでしょう」
さらにはこれまでにまたがってきた数々の名牝との比較を聞くと…。
「小柄でも牝馬らしい、いい切れ味を感じさせる身のこなしをしますから。
ヴィブロス(福永の手綱で
秋華賞を制した時は414キロの小兵)とか、あんな感じですかね。力は十分に足りる。まだ3戦のキャリアだし、あまり(戦法を)決めつけ過ぎずに持ち味を生かす競馬をさせたい。楽しみですし、本当に(調教を乗りに)来て良かった」
名手確保の幸運、そしてその名手をして比較対象にGIホースの名が挙がるほどの能力…。
ライラックが
桜花賞の台風の目になる可能性は相当高いと思っている。
(立川敬太)
東京スポーツ