2歳王者決定戦のひとつ、
ホープフルSへの
ステップレースに位置づけられるのが
京都2歳S。距離的に春のクラシックに直結する重要なレースであることは言うまでもなく、過去の上位入線馬を見渡しても
エピファネイア、
タイムフライヤー、
ワールドプレミアなど活躍馬は枚挙にいとまがない。今年も1、2着馬が
皐月賞(17日=中山芝内2000メートル)のゲートにたどり着きそうで、その期待感は高まるばかりだ。
一方でクラシックの頂までの道のりはなかなか険しく、
皐月賞を勝利した例は2009年
京都2歳Sの勝ち馬
ヴィクトワールピサまでさかのぼらなければならない。今年、13年ぶりの快挙に挑むのが
ジャスティンロックとなるわけだ。
「実は厩舎としては自信があったんですよ。結構やれるんじゃないかと」
京都2歳Sをそう振り返るのが開業3年目にしてクラシック、いやGIに初めて歩を進める吉岡調教師だ。要は期待通りの勝利を収めたわけだが、トレーナーはその勝ち方にも目を細めている。
「3コーナーでは5頭分くらい外を回らされたのに、そこから勝ち切るのはなかなかできないですよ。あの時点で
皐月賞を目標に据えて、すべてそこから逆算して組み立ててきました。それくらい将来を期待したくなる勝ちっぷりだったってことです。しかも戦ったメンバーもその後に活躍している馬が多く、レースレベルそのものも低くはなかったですからね」
まだ緩さが抜けていなかった2歳時には無理をさせたくなかった。だからこそ「
ホープフルSはオーナーに了承を得て回避し、
皐月賞一本に目標を絞りました」と吉岡調教師。そして明け3歳初戦に
弥生賞ディープインパクト記念を選択したことについては「レースを経験しないと成長もできませんから。本番前に中山への輸送も経験させたかったし、11月からの間隔を考えればベストのタイミングだと思って」。
本番への直行策が常識になりつつある昨今のクラシック戦線だが、馬の状態を気遣いながら、効果的に実戦を使って成長を促す。これこそがやはり王道なのではないか。
現に
ジャスティンロックは2歳時からトモの緩さがなかなか解消されなかったため、これまでは坂路調教では目立つ時計が出ていなかったのだが、1週前追い切りでは馬なりで4ハロン51.7-12.5秒の好時計をマークするなど、ここにきて目覚ましい成長を遂げている。そう、すべてはトレーナーのもくろみ通りに事が運んでいるのだ。
「競馬を使った後にひと息入れたことで、また馬は良くなっていますね。最後に脚を伸ばす馬なので、舞台を問わずにいい競馬ができます。前半スローになって、2コーナーまで多少力んだ
弥生賞でも0秒2差(4着)。あの内容からすると、もう少しペースが流れてくれれば、際どい勝負ができそうですね」
冷静にレースの見通しを語る吉岡調教師の初のGI挑戦がクラシック制覇の快挙となっても、記者的には驚きはない。
(鈴木邦宏)
東京スポーツ