若かりしころ、好きになった馬がいる。
エアデジャヴーだ。単勝勝負が基本の当方にとって
桜花賞3着、
オークス2着、
秋華賞3着と1998年の牝馬3冠は悔しい思いの連続だったわけだが、当事者たちのそれは当方の比ではなかったことだろう。あのころはこの血統を後々、取材することになるとは夢にも思っていなかったのだが…。
エアデジャヴーを祖母に持つ
エアスピネルという素質馬が現れた。しかし、
皐月賞4着、ダービー4着、
菊花賞3着と、祖母をなぞるかのように2016年の3冠戦はすべて惜敗。「
エアデジャヴーの血なのかな」と管理する笹田調教師さえもそう口にしたくらいで、
エアスピネルがGIで惜敗を重ねるたびに、若かりしときに熱が入った
エアデジャヴーをいつも思い出してしまう。
ちなみに
エアスピネルの
母エアメサイアは05年の
秋華賞を勝ってはいるのだが、
桜花賞は4着、
オークスは2着、06年
ヴィクトリアマイルも2着と、やはりこの血統はGIで善戦止まりがやたら多い。半面、これだけの活躍を見せている母系なのだから、何かひとつ
キッカケさえあれば大爆発するポテンシャルを秘めているのもまた間違いないだろう。
前置きがやたら長くなったが、昨年に続いてGII
マイラーズC(24日=阪神芝外1600メートル)に出走する
エアロロノアは祖母が
エアメサイア、叔父に
エアスピネルがいる血統馬だ。
母エアワンピースには4歳春から3連勝を飾り、これからという時に脚部不安で引退を余儀なくされてしまった経緯がある。
「
エアメサイアの初めての子で期待は大きかったし、父は世界的な名マイラーの
ロックオブジブラルタルだったんだけどね。不運にも筋を傷めてしまって…。無事なら間違いなく、もっと活躍できた馬だった」
笹田調教師にとっては
母エアワンピースの無念も含め、
エアデジャヴー(義理の父・伊藤雄二元調教師の弟・正徳元調教師が管理)→
エアメサイア(伊藤雄二元調教師が管理)から続く一族にゆかりのある血統
エアロロノアとのコンビで、大きなタイトルを取りたい気持ちはそれだけ強い。
「前走(
六甲S)はいつもよりもスタートを出て、中団外めのいいポジションで運べた。反応が良過ぎて早めに抜け出す形になっても押し切ってくれたからね。まだ緩さがあって完成にはもう少し時間がかかるとは思うけど、現段階でも重賞を狙える馬だと思っている」
そう、笹田調教師は完成の域に達すれば、GIも視野に入る逸材とみているのだ。
「この血統はどうしても成長が遅く、それにエンジンのかかりも遅いところがあるんだ。
エアスピネルもあと一歩の競馬が多いのは母系の血なのかな。
エアロロノアは前回がひと皮むけた競馬だったから、ここでいい勝ち方ができるようなら…」
3勝クラス勝ち上がり直後に挑戦した昨年の当レースでも0秒2差5着に善戦。確かな成長を見せている今の
エアロロノアなら…。この
マイラーズCはもちろん、GIの大舞台でも「チョイ足らず」の血の呪縛を打ち破ってくれるんじゃないかと思っている。
(栗東のエア一族大好き野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ