激戦となった
桜花賞に続く、牝馬第2冠
オークスに向けての重要な
トライアルがこの
フローラS(24日、東京芝2000メートル=2着までに
オークス優先出走権)。粒揃いのメンバーが集結する中でも今年、一番の注目を集めるのは、あの名手ルメールが「新しい
グランアレグリア」と絶賛した
ラスールとなろうか。
逸材を新たに管理することになった宮田調教師にとっては、いきなり勝負の一戦を迎えるわけだが、プレッシャーはそれだけではなかろう。何せ譲り受ける形となった藤沢和元調教師(現
JRAアドバイザー)は自身の憧れの存在だったのだから…。
少年時代、父親に連れられて東京競馬場で見た
バブルガムフェローの雄姿。
グレード制導入以来、初めて3歳馬が
天皇賞・秋(1996年)を制する瞬間をまぶたに焼き付け、心は自然と偉大な馬を育て上げたトレーナーに向いた。
紆余曲折を経て調教師免許を取得。開業前には憧れの藤沢和厩舎を訪ねた。
JRA1570勝を挙げた競馬界の“生ける伝説”から、美浦をけん引する若きリーダーへ受け継がれたものとは…。研修中に感銘を受けたのは「馬にも
プライドがあることを忘れるな」という言葉だった。
「馬は大切なパートナー。馬の気持ちを尊重し、人本位でなく、まずは馬本位に考えることが大事だと教わりました」
目を凝らして徹底的に馬を観察し、常に馬の目線で物事を考える。この“藤沢和イズム”こそが、宮田調教師の太い幹となり、
ラスールの馬づくりにも生かされている。
「雰囲気はいいですよ。これでもう一段上がってくれば。先生に相談したら“好きなようにやりなさい”と言ってくださいました。恐れずに勇気をもってやっていこうと思います」
今回は一気に距離を延ばすため、トレーナーは調教に乗り慣れた杉原の意見などを参考に、メンコを試すなど、ありとあらゆる工夫を凝らしている。「2戦目(
シンザン記念7着)に見せたように、
テンション次第ではモロい面も出しますから…。難しいですね」。そう、細心の注意を払いながら、馬目線で調教を重ねているのだ。
そんな宮田調教師、実は藤沢和元調教師とは「ゴルフ仲間」でもある。「数年前にコンペで同じ組になって以来、何度か誘っていただきました。私は初心者なので、先生から道具を譲っていただき、大切にしています。お上手なので、腕ではとても追いつけませんけどね」と苦笑する。もちろん、ゴルフの腕だけでなく、調教師としての手腕も、プライベートな付き合いの中で盗んだものがあったのではないか。
藤沢和元調教師から譲り受けた
ピカピカに磨き上げられたゴルフクラブ同様、宮田調教師が試行錯誤しながら仕上げてきた
ラスールもまた、ターフの上でまばゆいばかりの光を放つに違いない。
(美浦の唯一無二野郎・垰野忠彦)
東京スポーツ