コ
ロナ禍による競馬場への入場制限が依然、続いています。私が競馬記者になったばかりのころは毎週末、どこの
テーマパークに迷い込んだのかと思うくらい、大勢の老若男女であふれかえっていたなあ〜。生まれてから一度も競馬場に行ったことがなく、どこか“怖い”とすら思っていたので、イメージとのギャップに驚いたものです。
当時はいろんなイ
ベントなども開催されていましたが、先輩方が口をそろえるのは「結局、競馬場に人を集めるのは馬なんだよね」。地響きがするほどのファンの声援と熱気であふれかえっていた、かつての競馬場。長い間そこにファンを集わせてきたのは、その歴史の中にいたスターホースたちの存在なんですね。
「今は会いに行きたいと思っても、好きな馬に会えないファンがたくさんいる。“一度でいいから
メロディーレーンちゃんに会いたい”って声を大勢からもらっていて。何とか会わせてあげられないかと思ったんだ」
3月28日、兵庫県南あわじ市にある
ヒイラギステーブルにて、「レーンちゃんに会えるツアー」が開催されました。
メロディーレーンちゃんファンの方々が、放牧中の彼女に会いに行ける夢のような企画。その発案者である森田調教師は、前述の思いからこの企画を実行されたそうです。
競馬場でファンの前に姿を表す競走馬たちは、いわば究極の“仕事モード”。厩舎の馬房で
リラックスしている時と比べると、まるで別の人格(馬格?)に替わってしまったかのように見えます。そういう姿ももちろん競走馬の魅力の一つなんですが、もしオフの日の彼、彼女たちに出会うことができるなら…。
きっとファンの皆さんは「推し」の子たちをもっともっと好きになると思うんです。ただ、繊細な心を持った生き物相手だけに実現させるのは難しいこと。それでも
メロディーレーンちゃんの穏やかな性格と毎日密に連絡を取り合った森田調教師&
ヒイラギステーブルの協力体制、そして馬主さんの理解があり、今回の企画が実現したようです。
当日撮影された写真や動画を見せていただきましたが、森田調教師や関係者が近くにいることもあってか、馬房にいる時のようにとても落ち着いて
リラックスした様子の
メロディーレーンちゃん。そして彼女を前にしたファンの方々のこれ以上ないくらい幸せそうな顔!
皆さん、まるで初恋の人に再会したかのように頬を赤らめ、若干涙ぐんでいる方もいるように見えました。彼女と近くで対面すると思っていた以上にきゃしゃに見えるようで「こんな子が牡馬に交じって長距離重賞を走ったりしているのか」と改めて感動された方も多かったみたいです。
抽選だったので会えた方はごく一部だと思いますが、きっとその方々が発見した新しい
メロディーレーンちゃんの魅力を周りに伝えていってくれるはず。そして彼女が現役でいる限り、どの競馬場にだって会いに行こうと思ってくれるだろうし、無事に走り切れるよう願掛けとして馬券も買ってくださるのでは。
そんな
メロディーレーンちゃんは再び超強豪を相手にした大舞台(
天皇賞・春、5月1日=阪神芝外→内3200メートル)に挑戦します。普通に考えれば厳しいかもしれませんが、彼女を知り尽くした森田調教師は力を出し切れるよう「十分に(レース)間隔を取る」ことを大切にして、ここまで待機させていました。
「間隔が詰まると進んでいかなくなってしまうんだよね。それと前走(
ダイヤモンドS13着)もそうだったが、どうも左回りが苦手みたい。とにかくスタミナはあるし、直線を左手前で走れば脚を使ってくれると思うよ」
当日、阪神競馬場にどれだけの
メロディーレーンちゃんファンが来てくれるのかな。彼女だけでなく、それぞれの馬のファンたちの存在と応援は競馬の“魂の一部”なんだと私は思います。
(栗東の転トレ記者・赤城真理子)
東京スポーツ