NHKマイルCの3連単153万円超はなかなか衝撃的だった。立役者は最低人気で3着に食い込んだ
カワキタレブリー。そういえば
ケンタッキーダービーでも繰り上げ出走で現地最低人気の
リッチストライクが制して話題を集めたっけ。“最低人気”は今の競馬界のトレンドワード?
記者の頭に真っ先に浮かんだ最低人気の激走は、
JRA・GI史上最高となる3連単2070万円超に貢献した2015年ヴィクトリアMの
ミナレット(3着)である。所属は大和田厩舎。そして当時と似たムードが
オークス(22日=東京芝2400メートル)に出走する
ラブパイローに漂っていると感じるのは、単なる担当厩舎のひいき目なのか、それとも…。
まず“運”が味方した。前走の1勝クラス・
ミモザ賞をブービー人気で逃げ切った後、陣営はクラシックの追加登録料を払って、ぶっつけでの
オークス参戦を表明。出走が確定していない状況にもかかわらず、
トライアルを挟まない選択をしたのは一種の賭けだった。
「間隔を空けたほうがいいタイプですからね。出走枠に入れたのは幸運でした。2勝目を挙げて馬に自信がついたのか、気性が大人になって、雰囲気はすごくいい。逃げるにしろ、追い込むにしろ、極端な競馬をして持ち味を生かしたい。おそらく最低人気でしょうけど(笑い)」
大和田調教師からはこんな明るく前向きなコメントが。そういえば
ミナレットの時も「具合だけはいい」みたいなことを言っていたよなあ〜。
一方でコンビを組んで4戦目となる鞍上の野中は、かつて自身の“悲運”に泣いた経験を持つ。19年暮れの
ホープフルSで
ガロアクリークでGI初出場を果たすはずが、インフルエンザのため急きょ乗り替わりに…。
「持ち味はしぶとさ。スッと切れるスピードはないけど、抜群の勝負根性がある。初めて乗った時が1600メートルで、徐々に距離を延ばしてきました。かかる感じはないので、さらに延びるのもいいと思っています。僕自身GIは初めてですし、世代のトップを争うレースに乗せていただけるのはとてもありがたいこと。心配なのは“人間の体調”だけですかね」
1週前追い切りに騎乗した野中はパートナーの状態の良さを確認したうえで、自虐的ジョークを交えて笑った。
ちなみに未勝利勝ちが福島ダート1700メートルと砂適性も高い
ラブパイローは、この後に交流重賞の
関東オークス(6月15日=川崎ダ2100メートル)にも挑戦する異色の青写真を描いているそうだ。
「馬」自身は充実一途の一方で、「人」トレーナー&ジョッキーに感じる心の余裕。「最低人気」になるかどうかは分からないが、穴馬券の使者としての資格は十分あるように思えてならない。
(美浦のイレブン野郎・立川敬太)
東京スポーツ