今や当たり前となった「ダービーからダービーへ」の
コンセプトは、全体的な2歳馬のデビュー時期を早めたと同時に、「でなければクラシックは勝てない」と結論付けるほどの勢いがある。それだけ早期デビューの重要性は高まったわけで。
では1年前はどうだったかといえば、そう
コマンドラインである。昨年の3回東京開催における最注目馬であり、当欄でも世代のトップバッターとして紹介した。デビュー前の最終追い切りに騎乗したルメールが「来年のダービーを予約しておきます」と言い放ったほどの逸材。果たしてそれはリップサービスに過ぎなかったのか…。
改めて振り返ってみると、昨年のこの時期の
コマンドラインの調教内容は文句なしに素晴らしいものだった。
アパパネや
アーモンドアイなど牝馬のスターホースを送り出してきた国枝調教師が「ケチのつけようがない」と評していたほど。
一方で牡馬特有の成長過程における仕上げの難しさについて、後の取材で言及したこともある。ここ2走の不振(
ホープフルS=1番人気12着、
毎日杯=5番人気8着)を踏まえ、改めて
コマンドラインの現在地をトレーナーに伺った。
「ずっとディープ(インパクト)産駒というイメージが頭にあったんだけど、少なくとも“飛ぶ”ディープのイメージではないよね。大きい馬だし、力勝負に分のあるタイプ。
ここ2走はゲートで安目を売って、流れに乗れない競馬が続いたけど、ジワジワとは伸びるから2400メートルなら挽回できるチャンスはあると思っているんだ。まずはスタートを五分に出ることだけどね」
見逃せないのは1週前追い切り。
サークルオブライフを交えた3頭併せの最内で、馬体に“ゴツさ”が出てきた感のあった
コマンドラインの近況を吹き飛ばすような素軽い走りを見せたのだ。
「2週前追い切りで結構ハードに追ったことで、だいぶ気持ちが入ったのかな。動きが素軽くなってきたし、
毎日杯の時とは全然違う」とトレーナーも良化ぶりに手応えを感じているが、実はこの1週前追い切りでは初めてブリンカーを装着。
これも“変化”の要因になっており、「レースでも(装着しよう)と思っている。かかるようなことはないだろうからね。東京は実績があるし、スイスイと動けるタイプではないけど、2400メートルなら“ひょっとして”の思いはある」
国枝調教師は1年前の予約が“キャンセル”になったことに「ルメさん(=ルメール)も冷たいよな」と冗談めかしながらも、望みは捨てていないのだ。
現状では2分の1の抽選突破という試練が待ち受ける
コマンドラインだが、過程はどうあれ、すべてのサラブレッドとホースマンの夢が集約されたレースがこの
日本ダービー(29日=東京芝2400メートル)。だからこそ、最後の最後まで何が起こるか分からない面白さがそこにはある。
(立川敬太)
東京スポーツ