「
日本ダービー・G1」(29日、東京)
競馬界の至宝が、また新たな金字塔を打ち立てた。
武豊騎手(53)=栗東・フリー=が、3番人気
ドウデュースで史上最多となる6度目のダービー制覇を達成。50代で初の栄冠で増沢末夫元騎手の48歳7カ月6日を大幅に更新する、53歳2カ月15日の最年長記録を樹立した。陣営は、
凱旋門賞(10月2日・仏パリロンシャン)参戦を表明。3歳の頂点に立った心強いパートナーとともに、悲願の舞台に挑戦する。
9年ぶりに、ダービーのお立ち台へ
武豊が戻ってきた。2歳王者
ドウデュースを駆り、自身の記録を更新する史上最多となる6度目の栄冠。「感無量です。多くのお客さんの前で勝つことができてうれしかった。最高です」と満面の笑みだ。6万人を超える競馬ファンから沸き起こった“
ユタカコール”に右手で、左手で何度も
ガッツポーズ。「よく聞こえました。ありがとう」。最後はウイナーズサークルを1周し、全身で感謝を伝えた。
後方5番手からの競馬になったが、「思っていたよりもいい位置が取れて、いい形で進められた」と回顧する通り悠然と構えた。前半1000メートル通過が58秒9の速い流れ。2番手から早めに先頭に立った
アスクビクターモアに対し、外を回して勝負の長い直線へ。最後はこん身の力を奮って相棒をしったした。「4角を回ってくる時はしびれる手応え。軽く
ゴーサインを出したら、アッという間にかわした。先頭に立つのが早過ぎてフワッとしたけど、2着馬が来たら最後までしっかり伸びてくれた」。
イクイノックスの猛追を首差で振り切った。
数え切れないほどの記録を打ち立ててきた、競馬界の第一人者だ。29歳だった98年に、10回目の挑戦で憧れのダービージョッキーになった。30代は99年
アドマイヤベガ、のちの無敗の3冠馬
ディープインパクト(05年)で制し、40代では東日本大震災の爪痕が残る13年、
キズナで頂点に立った。今回は史上初の50代での栄冠。
キズナでは8年ぶりのVに「帰ってきました!」と声援に応えたが、今回は「また帰ってきました!」と盛り上げた。
オーナーの松島正昭氏とは古くからの友人で、「馬主になる前から
バックアップしてもらってきました。いつかは一緒に大きなレースを勝てたらいいね、と話してたんです」。その夢が21年暮れの
朝日杯FSでかなうと、2度目は競馬界最高のステージで実現した。
次は世界が相手になる。何度も跳ね返された
凱旋門賞。失格もあった。
ディープインパクトでも勝てなかった。「また大きな目標を与えてもらった。世界を目指して頑張りたい。好きな仕事を一生懸命やっていれば、またこういう名馬に出会える。励みになりますね」。53歳2カ月15日。史上最年長のダービージョッキーは、まだまだ夢を追い続ける。その瞳は少年のままだ。
提供:デイリースポーツ