春の牡馬クラシック戦線の中心にいたのは木村厩舎だった。第1冠・
皐月賞では
ジオグリフ、
イクイノックスで堂々のワンツーフィニッシュ。第2冠・
日本ダービーでも
イクイノックスが
ドウデュースをクビ差まで追い詰めた。この木村厩舎2騎には共通項が多い。ともにノーザン
ファームの生産馬、そして夏デビューであった点だ。
今週末から新たな世代による新馬戦がスタートする。その開幕週に木村厩舎がノーザン
ファーム生産の2頭をスタンバイさせたとなれば…。これはもう来年のダービーに向けての“勝負手”をいきなり打ってきたと判断して間違いなかろう。当欄としても2歳世代のオープニングを飾るにふさわしい「木村印の2頭」を徹底マークせねばなるまい。
まず初日(6月4日)の東京芝1600メートルにルメールとのコンビで出走予定なのが
ノッキングポイント(牡=父
モーリス)。2016年の
オークス2着馬で、全兄に
コディーノがいる
チェッキーノの初子にあたる。
「基本的には素晴らしいフットワークをしますが、
モーリスの産駒には(自分自身が)苦手意識を持っていて…。難しいというか、気が入り過ぎるところがありますね。併せにいった状況に驚いてしまって、質の高い走りではなかったです」と木村調教師が厳しい評価を下したのが2週前追い切り後のことだった。
ところが、1週前追い切り後には「前週を踏まえて修正ができているかが試される中で、力のある馬に食らいついていました(古馬3勝クラスの
レッドヴェロシティに追走併入)。順調に
ステップアップしています」と素質だけでなく、学習能力の高さもまた見せている。
もう1頭の
マローディープ(牡=
父スクリーンヒーロー)は2日目(5日)の東京芝1400メートルへ。木村調教師によると、2週前追い切りに騎乗したルメールに「まだ寝ているんで起こしておいてください」と冗談交じりに言われたくらいで、ダート1200メートルで4勝を挙げた
母モルジアナとは違った道筋を指揮官は描いている。
「母はヤル気一辺倒だったけど、その子らしくはないかな。おっとりとした気性なので1400メートルが気持ちの面で合わなくなる可能性はあるし、後々はもっと延ばしても…という感じ。まずこの距離を使うことがこの子にとって意味があるのかなと思っています」
決して勝利を確信した派手な発言は出ていない。とはいえ、開幕週にいずれもルメールを配して臨む木村ブランドの新馬が人気を集めないはずがなかろう。
この春に引退した
藤沢和雄元調教師は美浦トレセンにある自身の功績をたたえられた石碑に“一勝よりも一生”と刻んだ。一方で常に結果が求められる「シビアな現実」があることは誰もが知っている。仮に目標が1年後のダービーであったとしても、すでに競走馬としての勝負は始まっているのだ。果たして木村厩舎の2頭はどのような第一歩を刻むのか。今週末の2歳新馬戦開幕を楽しみに待ちたい。
(立川敬太)
東京スポーツ