府中のGI5連戦も終了し、函館競馬がスタート。人馬の少なくなったトレセンもすっかりローカルムードとなっている。GI取材に奔走してきた記者たちもホッとひと息つくタイミングだろう。
そんなまったりムード? の中で迎える今週の
エプソムカップ(12日、東京芝1800メートル)。「結果を残すことで恩返ししたいですね」とひそかに熱く燃えている男がいる。
トーラスジェミニに騎乗する
原優介騎手(21=小桧山)だ。
“恩返し”したい理由は、トーラスのここ参戦の経緯にある。もともとは昨年5着と健闘した
安田記念も視野に入っていた同馬。オーナーサイドや小桧山調教師も“原を乗せてあげたい”との思いが強かったそうだが、原はGI騎乗の条件となる通算31勝にまだ到達していなかった。そこで鞍上・原を優先して
安田記念ではなく
エプソムカップへ…という流れがあったという。
「新潟開催の後半くらいで“これはもう(31勝まで)間に合わないな”となって。
安田記念は登録せずに
エプソムカップ出走となりました。“あと6個(先週終了時点で25勝)勝てよ”って小桧山先生からもハッパをかけられていたんですけど…」
そう苦笑いする原だが、GIの舞台をパスしてまで自身を乗せてくれる関係者への感謝の気持ちは相当なものだ。「オーナー(柴原榮氏)は本当に温かい方。よくしてもらって、(所有馬に)たくさん乗せていただいています。ここでいい結果を出すことが恩返しですからね」
鞍上の気合に比例して肝心の馬の方も上昇ムード。「以前は馬を怖がるようになって、かわされるとやめてしまっていた。前走は調教からそのあたりを意識して調整し、競馬でも早めに動いていったけど、かわされてからもしっかり走れていた。一時期の不振は脱した感じですね」と原。少頭数とはいえ同型もいるメンバー構成に関しても「(ハナは)譲りません。逃げ宣言ですね」と覚悟を決めているようだ。
そして「オーナーさんとは相性がいいんですよね」と付け加える。確かに勝ち鞍こそ
トーラスジェミニの1勝(21年
東風S)のみだが、柴原榮オーナーの所有馬で2→3→3着した際の人気は14、9、9。穴党は注目すべきコンビだ。
惜しみなく若手にチャンスを与えるオーナーと調教師。そしてそれに心燃やす若き鞍上。もちろん、勝負の世界だからシビアな乗り替わりや采配も致し方ない。とはいえ、たまにはこんなドラマもいい。今週末は原の渾身の騎乗にも注目だ。
(美浦の両刀野郎・山口心平)
東京スポーツ