さかのぼること5月15日に東京競馬場で行われた青竜S。皆さんはご覧になりましたか?ダート1600メートルで行われた3歳オープンの戦いを制したのは、
モーリス産駒の
ハセドン(牡、栗東・安田翔)でした。その勝ちっぷりが…もう、強烈!個人的には“追い込み馬列伝”にノミネートしていい案件だと思ってます。
この
ハセドン。芝2000メートルの新馬戦こそ6着に敗れたものの、ブリンカーを装着し、ダートに転じて無傷の3連勝。特筆すべきは前記の青竜Sで、4角最後方から直線大外を回って進出し、上がり3Fは何と“34秒3”という芝並みの切れ味を発揮-。突如として画面横から飛び込み、ラ
イバルをまとめてのみ込んだ姿に“新星誕生”を予感させました。
あまりの衝撃に後日、安田翔師のもとへうかがうと「今ごろ注目ですか?遅いですね」と失笑されたが、青竜Sは5番人気でのV。下馬評はさほど高くはありませんでした。でも、トレーナー目線では「(◎が)
グリグリかと思ったら5、6番人気でしょ?あれは意外でしたね。あえて中山千八とかには向かわず、東京のマイルに狙いを定めてのレースだっただけに、あれっ?と思いました」とのこと。グウの音も出ない、とはまさにこのことです。
ネットでは、青竜Sでの横山典騎手の位置取りを“ポツン”と言うのでしょうか。スカッとする勝ち方であったが、その半面、危うさをはらんでいるポジショニングでもあります。そのあたりを安田翔師に解説してもらうと「もちろん勝ってほしいですけど、あそこは(勝つことを優先して)せかして安心できる位置にいたら100パーセント勝てない。それは断言できます。いい脚を使うためには、(現段階では)あの位置からじゃないと駄目なんです。上がり3Fの数字は特に意識はしていません。今は最後にしっかりと脚を使うために、リズムを乱すことなく、いかに前半整えて走れるかを意識しています」とのこと。逆説的に言えば、完成度の低い現状であれだけのパフォーマンスができるのだから、スキルアップした際にはとてつもない馬になるかもしれません。
担当は昔から世話になっている西村厩務員。今は次戦に予定しているユニコーンSと同日に行われる
マーメイドSに出走予定の
クラヴェル(今度こそ重賞制覇を!)も担当しており、当該週は大忙しとなりそう。以前、
ハセドンの特徴について聞いた時は「一回、レースに使うと疲労が大きい」と話していましたが、幸いにも青竜Sのあとは「これまでほどの疲労ではない。あとひと月あれば何とか」と話していました。その言葉通り、6月1日から時計を出し始め、ここまで順調な乗り込みを消化。この分なら、いい状態でレースを迎えられそうです。
夢は大きく-。安田翔厩舎のダート馬と言えば、真っ先に
オメガパフュームが思い浮かびます。指揮官は「まだまだ。あのあたりまでいくには、もっと課題をクリアしなければ」と手厳しいが、それはもちろん期待の裏返し。伸びしろしかない3歳馬に「まだ頼りないけど、いい馬なのは確か。オメガのような馬を意識して、課題を与えてもいいかな、と思える馬です」と、今後のさらなる飛躍を期待していました。
果たして、ユニコーンSでもあの豪快な末脚がさく裂するのか?それには「まだ緩さがあってコーナリングとかでエネルギーを使わなければならないので、今はワンターンにこだわって使っていきたい。位置取り?それは少しずつポジションを上げていければいいけど、それよりも今はリズムを乱すことなく走れるかの方が大事。リズム良く走れる位置が、仮に最後方であればそれはそれでいい」と指揮官は“馬優先主義”を貫くようです。
それでも、将来性豊かな
ハセドンならば、一発回答で重賞初挑戦&初制覇を果たしても不思議のない可能性を秘めています。愛くるしい馬名と、派手なブロンズヘアが特徴的な“砂の新星”に、皆さんもぜひ注目してください。(デイリースポーツ・松浦孝司)
提供:デイリースポーツ