ダービーウイークのことだ。ルーティンワークの厩舎回りをしていると、ある関係者に呼び止められた。記者が手に持っていた某競馬週刊誌を見せてほしいと。そしてダービー出走馬たちの写真を見ながら、こんなことをつぶやいた。
「やっぱりダービーに出るような馬は顔つきからして違うよな〜。みんな格好いいもん」
以前から「格好いい名前の馬は走る説」に対して、「走る馬の名前は格好よく思えてくる説」を唱えてきた当方。それゆえ「イケメンホース=走る説」にイエスとは即答できなかったのだが…。
「最近、はやりのウマ娘に出てくる馬たちだってそうじゃない。
トウカイテイオーなんて、びっくりするくらい男前だったんだからさ」
画像を確認すると、確かにこれはイケメンだ。
「でしょ。単に顔つきの話だけじゃなくて、内面から出てくるものがあるんだと思うんだよな」
そういえば、あの
ディープインパクトも「目の輝きを見て」金子真人オーナーは購入を決めたという。血統や体形だけでなく、顔を見るのも「相馬眼」を養うためには大事なポイントのひとつなのかもしれない。
かなり前振りが長くなってしまったが、本題はここから。
宝塚記念当日(26日)に行われる阪神芝外1800メートル新馬戦といえば、2020年
ダノンザキッド(
ホープフルS)、17年
ダノンプレミアム(
朝日杯FS)など、後の重賞勝ち馬が多数勝ち上がっている出世レース。そんな注目の番組に楽しみな“イケメンホース”が出走する。
アンテロース(牡=父
モーリス、
母シャブリ・岡田)はシュッとした顔立ちに、額にはハート形の流星。二次元の世界から飛び出してきたようなその風貌は、何か“持っている”と期待を抱かずにはいられない。
「検疫の時から女医さんやスタッフの方々がとても注目してくれて。“顔のいい馬は走る”というのはよく聞きますし、この馬にも頑張ってほしいですね」とは担当の北野助手だが、もちろん、顔だけでなく、中身も伴っている。近親に世界ランク1位にも輝いた
ジャスタウェイがいる血統馬で「スピードがあって、初めてウッドで追い切った時から楽にいい時計が出ました。首差しや背中の柔らかさなどを見ると、母父の
ディープインパクトが出ている感じがします。フットワークも素軽いですよ」。
ドウデュースで今年のダービーを制したキー
ファーズ・松島正昭オーナーの長女、松島悠衣氏が代表を務めるインゼルサラブレッドクラブの所有馬。同クラブは12日の函館新馬戦で
クリダームが所属馬初出走、初勝利を決めるなど勢い十分で、もちろん、相性抜群の
武豊騎手とのコンビなのも心強い。
アンテロースとはギリシャ神話の「返愛の神」。その特徴的な流星のように、ファンのハートを射抜く走りを見せてくれるに違いない。
(西谷哲生)
東京スポーツ