177センチの高身長を誇り、長い手足を生かした騎乗で2年目の今年は26勝をマーク(7月12日現在)。
松本大輝騎手(19)=栗東・森=が、既に1年目の18勝を大きく上回る活躍を見せている。さぞ充実した近況を送っているのでは…と思いきや、「正直、リズムは良くないです」と胸中を明かしてくれた。
その真意は-。「(今村)聖奈は重賞を勝ちましたし、(角田)大河もよく勝っている。1年目の自分と比べたら、その時点で負けています」。下からの突き上げ、そして「今はたまたま勝っていますが、上にはいっぱいいるので」と、上位騎手とのはざまで戦っている現状。それゆえ、「納得は全然していません。順調とは言えないなと思っています」と気を引き締めている。ただ、そんな中でも成績が向上しているのは確かだ。
この夏は昨年に引き続き小倉を主戦場に。全場最多の15勝を挙げている競馬場で、「苦手意識がないです。どこが一番乗りやすいかと言われれば小倉ですし、たまたまかも知れませんが流れがいい場所です」と、プラスイメージを持って挑めるコースだ。勢いを加速させるにはもってこいの舞台。今夏も早速9日の11R
マレーシアCを
ジャスパーウィンで逃げ切り、自身初の3勝クラス&メインレースVを決めてみせた。
相性がいいだけではない。小倉は成長のきっかけをつかめた舞台だったという。さかのぼること10カ月。昨年9月4日の小倉3R(芝1200メートル)で
ナリタブルホークに騎乗した時のことだった。
ナリタブルホークはその前のレースで逃げて2着に好走。それだけに、今回も自分の競馬に持ち込みたかった…が、やや出負けする形に。そこから出して行くも、4頭雁行の大外を走る形になり、かなりの距離ロスが発生。3角過ぎに早くも失速し、最下位17着に。世代の未勝利戦最終週での大敗。JRAで勝ち上がらせることができなかった。
そんな松本に声を掛けたのが
岩田康誠騎手だった。「康誠さんに“そんなんじゃ勝てへんぞ”と言われて、競馬に対する考え方を変えさせられました。“何もするな、馬の邪魔をしてリズムを崩すな”と」。続く4Rでは助言通りに馬を信じ、スムーズさを意識。手綱を取った
ゾンニッヒは8番人気だったが、2番手からあっさり勝ってみせた。「何もせず乗ってみたら勝って、こういうことなんだなと思いました。それを常に大切にして乗ろうと思っています」と笑みを浮かべる。
先輩のアド
バイスを胸に、型にはまらない、はめない騎乗で勝利に結びつけてきた。「力がある馬でもリズムが崩れたら勝てないですし、ロスなく回っても詰まったら意味がない。勝ち負け以外にもできることはたくさんあるので、それらを積み重ねてもう少し成績を上げていきたいです。減量で前に行く競馬をする時がありますが、減量が取れた時に同じ競馬をしていると勝てなくなりますから」と、長い騎手人生を見据えて確かな技術を身につけていく構えだ。
意外にも、ここまで重賞騎乗回数はゼロ。「乗りたいです」とひのき舞台へ思いをはせるが、「それはそうとやっぱりもっと勝ちたいですね。年間50勝は行きたいです」と、まずは土台固めに重きを置く。「自分の評価は自分で決めるわけじゃないですから。川田(将雅)さんや松山(弘平)さんのように、任されるようになりたいです」と憧れの先輩の背中を追い掛けながら、周囲の信頼を勝ち取っていくつもりだ。
得意の“ナツコク”でさらなる飛躍を遂げそうな松本。熱い夏にも負けない奮闘に期待したい。(デイリースポーツ・山本裕貴)
提供:デイリースポーツ