2歳戦の施行時期が早まった近年は6月の東京&阪神開催(今年は例外的に中京開催からスタート)デビュー馬により注目が集まり、実際に翌年のクラシックで成果を出すケースが確実に増えている。
一方、北海道デビュー組はどうか? 現地で取材を重ねてきた身としては「主流からは少々外れてきた」と感じる機会が正直、しばしばあった。それだけに今週末に行われる世代最初の重賞・GIII
函館2歳S(16日=函館芝1200メートル)は「点」ではなく、「線」の視点で注意深く分析したいと考えている。
今年の函館デビュー組にあって、問答無用に最も内容のいい勝ち方をしたのは
スプレモフレイバー。コンビを組んだ吉田隼が「まだ緩さのある現状で結果が出せれば先々が楽しみ」と戦前に話していた開催2週目の新馬戦(芝1200メートル)はワンサイドの逃走V。2馬身差をつけた2着
ミスヨコハマが次走Vでこちらも当レースにエントリーしてきたことが素質の高さを裏付ける。
ただし、吉田隼のトーンが想定通りに上がってきたかといえば、意外にそうでもない。函館ウッド5ハロン70.5-12.5秒で3歳未勝利馬に1馬身先着を果たした1週前追い切り後に出てきた言葉は辛口なものだった。
「使った後が思ったほどピリッとしていなかったので、しっかりやりたかったんですが、時計は予定より少し遅かった。まだ手先だけで走っていて、沈み込むような感じがない。初戦も(調教でハードには)追わずに出走して、直線で追った時も同じような走りでしたから。気性的に新馬戦は走れましたけど、ここでどんな競馬ができるかが重要ではないでしょうか」
担当の黒沼助手によると、レース後に1週間ほど楽をさせたことで「気持ちの面では非常に落ち着いている」という。
ダイワメジャー産駒特有の
テンションが上がる心配を回避できたのは大きいが、一方で鞍上が指摘する実戦を使われることで見込んでいた「上昇度」が思ったほどには…。実はラ
イバル陣営からもこれとまったく重なる状況を耳にした。
函館開幕週の新馬戦(芝1200メートル)を鞍上・
武豊で制した
クリダームは中4週のレース間隔があるにもかかわらず、短期放牧を挟まずに在厩での調整を続けてきた。
「ずっと在厩して…という調整はウチの厩舎でも初めての試み。もちろん、調教自体は順調で時計もしっかり出していますが、妙に落ち着いているんですよね。初戦時は栗東から乗り込んでピリピリしていたこともあって、1200メートルにも対応できた面がありました。本質的な距離適性も含めて、今の
テンションで臨んで競馬でどうなるかは正直なところ分かりません」と北村助手は話す。
クリダームは
ハーツクライ産駒ながら、祖
母マザートウショウは当レース(1992年函館3歳S)を制しているように母系はバリバリの短距離型。一方で初戦勝ち後にオーナーサイドはクラシック路線への参入も期待していたくらいで、短距離馬として終わらすつもりもない。
スプレモフレイバー、
クリダームとも将来的に距離を延ばしていくうえではありがたい「落ち着き」が見られることが、今回のス
プリント重賞に臨むにあたってはマイナスに作用することもあり得るだけに予断を許さないというわけだ。それでもあっさりクリアするようなら、今年の函館開催のレベルは侮れないともできるのだが…。2頭の中間の変化を踏まえつつ、そのレースぶりを見守りたい。
(立川敬太)
東京スポーツ