先日まで米
オレゴンで行われていた世界陸上。連日、繰り広げられた熱戦にくぎ付けになったファンも多かったのでは。
というところで、こんな場面を想像してほしい。もし100メートル走がオープンレーンでの競走だったら、と。1レーンの選手が8レーンのほうへ切れ込みながら進んで、真っすぐ走り切った選手と互角の勝負をする――。そんな姿をイメージできるだろうか?
記者の答えは「NO」。しかし、競馬ではこのハードミッションを実際にやってのける馬がいる。例えば
アイビスSD(31日、新潟芝直線1000メートル)に出走する
シンシティだ。
陸上の100メートル走と同じストレートコースの新潟芝1000メートルで行われた前走の韋駄天Sは内枠5番からのスタート。担当の菅藤助手も「枠がどうかと思っていました」と半信半疑の思いを抱えながらの参戦だった。が、好発を決めると外ラチに向けて猛ダッシュ。これが芝初挑戦とは思えないスピードを見せてハナを叩いたのだ。
「隣の馬(6番
スティクス=10着)も速くて競る形に。その分、最後は苦しくなりましたが、ジョッキーは“止まっていなかった”と」
外枠発進だった上位2頭(16番
マリアズハート、12番
ロードベイリーフ)より距離ロスの多い競馬をしながら3/4+クビ差の3着。直線競馬への適性を十分に示してみせた。
となると、枠順以外にも当舞台の好走には大事なポイントがあるのか? 菅藤助手はこんな意見をくれた。
「テンに押っつけると最後に(脚が)なくなるイメージ。その分、スタートは大事だと思います」
そして、
シンシティにはこの点にアドバンテージがあるとも。
「ゲートは一緒くらいなんですけど、とにかく二の脚が速い。脚が短い分、回転が利いてスピードに乗りやすいんです。だから、他の馬より楽に行けるんじゃないかと」
もちろん、初重賞制覇へ向けて状態面も文句なしだ。「暑い時期でもまったくカイバが落ちませんし、1週前に速い時計(坂路4ハロン50.4-12.1秒)を出した後でもケロッとしていました。プラス体重でいけそうなのは好材料ですね」と上昇ムードが漂っている。
体形、そして走法も直線競馬向きの
シンシティ。絶好枠を引き当て、持ち味をフルに生かせる形なら、強敵相手でもチャンス十分なのでは。勝利した暁には、世界陸上のMC織田裕二ばりに「キターッ」と歓喜の雄たけびを上げたいと思っている。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ