先週の
エルムSは1番人気の
ブラッティーキッドが勝利して…という書き出しを予定していたが結果は惜しくも4着。地方時代からの連勝は8で止まってしまったが、初の重賞で好メンバーを相手に肉薄した内容は今後につながるものだった。「若いころは体がユルユルだった」と陣営が話すように、まだまだ伸びシロ十分の4歳馬。秋はさらなる活躍を見せてくれることだろう。
今週の
小倉記念(14日、小倉芝2000メートル)。
ブラッティーキッドのリベンジをと記者が期待しているのは同じ中尾厩舎所属の
シフルマン。こちらも3歳時に1→2勝クラスと連勝を決めて
菊花賞まで駒を進めた実力の持ち主で、重賞でも通用のポテンシャルを感じる1頭だ。
とはいえ、彼を応援したくなるのはむしろその後の成績によるものかもしれない。19年6月に3勝クラスに昇級してからは2年以上の足踏み。冬の時代を乗り越えて大舞台に戻ってきた“苦労人”には、どうしても肩入れしたくなる。
「以前は競馬でしんどくなるとフワーッとしていたけど、今はそこでもうひと踏ん張りができるように。経験を積みながら競馬を覚えて成長している」(宝来助手)
勝てない中でも一歩ずつ前へと進んできた
シフルマン。その中で身につけたタフさは簡単に失われるものではない。そして、この内面の成長は動きの質にも好影響を与えているという。
「もともとウッドで(6ハロン)80秒台をマークしたり時計の出る馬ではあったんだ。ただ動くのは動くけど、伸びずバテずでガツンとくるところに欠けていた。それが今は時計と中身が一致するようになってきた」
オープン(リステッド)初勝利を決めた前走(
都大路S)では、昨年の
小倉記念4着馬
ダブルシャープの追撃をクビ差で振り切り勝利。苦手にしていた瞬発力勝負にも対応できるようになってきたのは地力強化の証しにほかならない。「行くだけじゃなくためて脚を使えるように。自在性が増してきた」今は初の重賞制覇が視界に入る。
負けても負けても立ち上がり、地道に力を蓄えてきた
シフルマン。叩き上げの6歳馬が秘める底力には、真夏の暑さを吹き飛ばす快走劇を期待せずにはいられない。
(栗東の馼王野郎・西谷哲生)
東京スポーツ