極めて個人的な話になるのだが、当方は先週水曜に函館で
キーンランドC出走馬の取材を終えると、午後の飛行機で帰路について木曜から栗東トレセンで取材を行った。函館では83年ぶりの大雨による水害に見舞われ、その後がこのハードスケジュール。ついグチってしまいたくもなるが…。そんな当方よりもさらに過酷な輸送日程でGIII小倉2歳S(9月4日=小倉芝1200メートル)へ挑むのが
クリダームである。
函館の新馬戦(6月12日)を快勝した後、GIII
函館2歳S(7月16日)で2着惜敗。仮に世代最初の重賞ウイナーの座を手にしていたなら、その後は小休止となっていたかもしれないが…。
函館2歳S後すぐに小倉2歳Sへの出走を表明。これにより今夏だけで栗東→函館→栗東→小倉と馬運車で3000キロ以上の移動が決定したのである。2歳の若駒にはあまりに酷? もちろん、対策はきっちり行ってきた。
「小倉2歳Sへの出走が決まってからは、函館での調教はなるべく(気温が上がる)後半の遅い時間にして暑さ対策を施してきました。その効果もあってか、先々週に栗東へ帰厩した後は、思っていたよりも暑さは平気でしたね」(担当の榎本助手)
そして精神的な成長が格段に見られたことが、今回の決断を後押ししたのだろう。
「新馬戦は勝つには勝ったけど、返し馬で止まらなくなって(武)豊さんから“次はどうなるか…”って心配されてたんですよ。だから2戦目は負けはしたけど、落ち着きが出て返し馬もスムーズにできたのは大きな収穫でした。輸送でイレ込むこともなかったし、今も落ち着きがあるのはいい傾向ですね」
もちろん、克服すべき課題はハードな輸送日程だけではない。力を要する函館の洋芝から、最終週でも1分07秒台の決着になることもある小倉へと舞台が替わることも大きな課題の一つだが…。
榎本助手は「正直なところ、重たい馬場のほうが向いていると思っていた」と切り出しながらも、「これまで稽古に乗ってくれた(酒井)学さん、川島さんなど、乗る人、乗る人が乗り味を褒めてくれるんですよ。実際、稽古ではスピード感がすごくあるので、軽い馬場のほうがむしろ持ち味を生かせるのかもしれないですね」と高速決着への対応力にもまた手応えをつかんでいる。
クリダームを所有するのは新たにクラブ法人として立ち上げられたインゼルレーシング。クラブ初出走初Vを飾ったこの馬で、重賞初Vを何としても決めたい。もちろん、鞍上はクラブの“主戦”であり、先週の
ワールドオールスタージョッキーズで30年ぶりに優勝を飾った“レジェンド”
武豊だ。
北海道シリーズに本格的に参戦するようになって小倉での騎乗数はめっきり減ってしまったが、今年初参戦ともなれば当人の気合も違うはず。最終日だけの騎乗でも、千両役者が夏の小倉をきっちりと締めくくってくれる予感がしてならない。
(函館→栗東への移動完了野郎・難波田忠雄)
東京スポーツ