前哨戦で勝負駆けを決めた馬が本番で余力をなくして惨敗――。今も昔もGIでよくあるパターンだ。
京都新聞杯Vから一転、ダービーで12着に大敗した
アスクワイルドモアはその典型例。“決戦前夜”にビッシリ走り切ってしまったがゆえに…。夏の充電期を経て臨む25日の
菊花賞トライアル・GII
神戸新聞杯(中京芝2200メートル)で本来の野性味あふれる走りを取り戻す――。
日本ダービーでは12着と苦杯をなめた
アスクワイルドモア。落鉄のアク
シデントがあった
ホープフルS(10着)を除けば一度も掲示板を外したことがなかった堅実派が大きく崩れたのはナゼ?
厩舎の番頭・田代助手は敗因をこう振り返る。
「
京都新聞杯をレコード勝ち。しっかり走った後での中2週だった分はあったかな」
賞金加算できなければ競馬の祭典に出走できないという状況で、ビッシリ仕上げ、レースでは4角で他馬をはじき飛ばす荒々しい走りを見せての2分09秒5レコードV…。
直行ローテも珍しくはなくなった近年のクラシックでは、本番に向けていかに余力を残せるかが最重要ミッションのひとつであり、一発勝負に全力投球で臨んだこの馬にはもうお釣りがなかった。ダービーの大敗も納得だ。
この中間は宮城県の山元トレセンでリフレッシュ。8月中旬に帰厩後はここを目標にじっくり乗り込まれており、14日の1週前追いではウッド6ハロン83.0-11.6秒と元気いっぱいの動き。春の疲れはすっかり取れた様子で「あとは当週やれば態勢は整うと思う」(田代助手)と上々の仕上がりを見せている。
昨夏の
札幌2歳Sで後の
皐月賞馬
ジオグリフの2着に好走するなど、早くから重賞戦線で活躍してきた
アスクワイルドモア。気になるのはその成長力だが、陣営はダービーの時点で「これからもっと良くなる余地がある」と話していた。
秋の飛躍に向けて田代助手は「もともと動じない馬だったけど、だいぶドッシリ感が出てきた。ひと夏を越しての成長を感じるね」と、たくましさを増した素質馬に巻き返しの手応えを深めている。
神戸新聞杯が行われる中京芝2200メートルは重賞初Vを決めた
京都新聞杯と同じ舞台。「もともと癖がなくて乗りやすいタイプにしても相性のいい中京でやれるのはいいと思う。自在性があってどんな競馬でもできるし、いい勝負根性を持った馬。初戦から楽しみ」なら買わない手はあるまい。
昨年、厩舎の看板であるダービー馬
シャフリヤールが想定外の不良馬場に涙をのんだ(1番人気4着)レースを、
アスクワイルドモアが歓喜の舞台に変えてみせる。
(特捜班)
東京スポーツ