凱旋門賞の日本馬軍団は惨敗に終わった。当方は速報のためにテレビの前にスタンバイ。ひそかに
タイトルホルダーに期待していたので“勝ったら何かと(仕事が)大変だなあ”と考えていたし、4角まではなかなかいい手応えだったから「オッ」と力が入ったものである。
しかし、これまでさんざん指摘されているように馬場の違いは大きかった。しかもレース15分前には非情な豪雨。経験したことのない走路に4頭はのみ込まれた。海外遠征での調整面のノウハウは蓄積できても、異質な馬場への
フィットは馬の個性によるもので、さらに天候を味方にできるかどうかも運によるところが大きい。いずれにせよ、あんなタフな泥んこ馬場を走った心身へのダメージは心配される。全馬無事に日本に帰国し、フレッシュな状態で仕切り直してほしいものだ。
こうやって
凱旋門賞を振り返りつつ
毎日王冠(9日=東京芝1800メートル)の出走馬を見渡すと…。「ダメージ」という言葉でピンと来たのが
キングストンボーイ。昨年の
青葉賞で2着し、ダービーの出走権を手に。定年間近だった
藤沢和雄・元調教師にとっての“ラストダービー”だっただけに報道陣も色めき立ったのだが…。結局は、1か月で2400メートルを2度走ることの過酷さ、それが馬の将来に与える影響を懸念しての回避となった。
成長途上の馬へのダメージを最小限にし、成長幅を最大限にする――。
青葉賞の後は長い休養や除外などもあってコンスタントに使えずに結果も出ていないが、伯楽の“英断”が、この馬のキャリアの中で必ず生きてくるはずだ。
藤沢和厩舎から
キングストンボーイを引き継いで3戦目となる鹿戸調教師も「無理せず大事に使われてきたからね。そのおかげもあって馬もよくなってきた」と成長ぶりを認める。「前走はスタートは悪かったけどいい脚だった」と
関越S(2着)では敗れたとはいえゴール前の脚勢は強烈。藤沢和・元調教師が思い描いていたような成長曲線をしっかりとたどっているようだ。「中間は放牧を挟んで順調。相手は強くなるけど、ここでどんな競馬ができるか楽しみだね」と鹿戸師。GI馬4頭が立ちふさがるレースだが、印を回すべき馬かもしれない。
(
凱旋門賞分析野郎・山口心平)
東京スポーツ