40年以上の歴史を持つ繁殖馬セール(ジェイエス主催)が10月26日、新ひだか町静内の北海道市場で開催された。19年からノーザンファーム繁殖牝馬セール(今年から
ミックスセールとして開催)も加わるなど、生産者のみならず、馬主の方々の間でも繁殖牝馬に対する関心が高まってきた。国内における牝馬の価値を高めることに加え、生産者にとって血の入れ替えを行う好機として、馬産地では年々、繁殖牝馬市場が重要度を増している。
繁殖馬セールで取引された繁殖牝馬の子供が、今年の競馬界もにぎわしている。
金鯱賞と
札幌記念を制し、
天皇賞・秋でも人気を集めた
ジャックドールの
母ラヴァリーノを筆頭に、
エルムS優勝馬の
フルデプスリーダーの母である
ファーストチェア、
アイビスサマーダッシュを差し切った
ビリーバーの
母デイドリーマー、
関東オークスと
ブリーダーズゴールドCを制した
グランブリッジの
母ディレットリーチェなど多数。20年に無敗で牝馬3冠を成し得た
デアリングタクトの
母デアリングバードも、14年に360万円(税別)で長谷川牧場が落札した。また
オメガフレグランスは、
オメガパフュームを生んだ15年秋に上場され、岡田スタッドが650万円で落札している。
繁殖馬セールが多くの関係者に認知されたこともあり、購買登録者数は年々増え、活発な競り合いが展開されている。上述したように、取引された母馬の産駒の活躍が、さらに関係者の視線を熱くしている。
今年は194頭(受胎馬156頭、空胎馬38頭)が上場され、159頭(受胎馬129頭、空胎馬30頭)が落札された。売却総額の8億9547万円は歴代2位、売却率81・96%は過去最高を記録。最高価格は
クリソベリルを受胎した
エターナルディーバ(牝6歳、
父キングカメハメハ)の5700万円で、(有)
ミントが落札した。
エターナルディーバの母は
JBCレディスクラシック連覇など交流重賞8勝の
ミラクルレジェンド。全兄には
グレートタイムがおり、優れたブラックタイプと、3歳でダート頂点に立った
クリソベリルを受胎していることから、活発な競り合いが展開された。
服部健太郎市場長は「1歳市場が好況だったことから、生産者や馬主の方々が、繁殖牝馬に対する購買意欲が増したのではと思います。前日に開催されたノーザンファーム
ミックスセールも結果が良かったこともあり、買い切れなかった関係者の方々が、狙いを絞ってジェイエスの市場に目を向けて頂けた側面もあると思います。別の環境に移ることで活躍馬が出るのでは…と思わせるような、質が高く若い繁殖牝馬が上場されるケースが増えてきました。取引された馬の産駒からレースで活躍する馬はもちろん、セレクトやセレクションでも高額取引される馬も増えている状況から、繁殖馬セールの信頼を得ていると感じています」とセールを振り返った。
年が明けると、1月25日に冬季繁殖馬セールが予定されており、競走を終えた馬たちが主軸に上場される。服部市場長は「寒い時期の開催で頭数的に制限される面はありますが、今回買い切れなかった方々に、チャンスを提供できるような上場馬をそろえるよう、努力したいと思います」と、冬季開催への抱負を語った。(競馬ライター)
スポーツ報知