昨年の覇者
テーオーケインズ断然ムードの第23回チャンピオンズC(12月4日=中京ダート1800メートル)で勢力図を一気に塗り替える馬がいるとすれば…。「トレセン発秘話」を担当した赤城真理子記者は、伸びシロの大きい3歳馬にその可能性を見いだした。「レジェンド」
武豊、そして「若き才女」
今村聖奈に“スイッチ”を入れてもらった「3歳ダート王」
ノットゥルノはこの中間、さらなる進化を遂げている。
衝撃を受けたシーンがありました。3歳馬たちが砂上の頂点を争った
ジャパンダートダービーはコースの至る所に水が浮く不良馬場で行われたのですが…。各馬がゴール板を通過した後、カメラに抜かれた
武豊騎手の勝負服だけがほとんど汚れていなかったのです。
ノットゥルノがゴールしたのは先頭でも、道中は好位を追走。あの位置で泥をほとんどかぶらなかったということは、見た目以上に外を回ってねじ伏せた証しだと思います。
「跳びが大きい馬なので、多少距離ロスがあったとしても、自分のリズムで走れたほうが強い競馬ができますね。それにあの時は状態がすごく良くて、勝てる自信がありました。(武)豊さんも、またがってゲートに入るまでに、そう思ってくれたみたいです」
振り返ってくださったのは
ノットゥルノを担当する平井助手。かつて
ミッキーアイル(2014年
NHKマイルC、16年
マイルCS)の担当者だったことでも競馬ファンには有名かも。
「
ミッキーアイルもそうでしたが、
ノットゥルノも普段は本当におとなしくて、かわいい子です。走る馬に共通することなのか、レースに行くとスイッチが入りますね」
もっと掘り下げれば、
ノットゥルノの競走馬としてのスイッチは“ジョッキー”。パドックを引いている間はおとなしいそうですが、ジョッキーがまたがった瞬間、うるさくなるそうです。
「ゲート裏は特にうるさくて毎回、気を使いますが、それがこの馬の
ファイティングポーズだと思うんですよ」
だからでしょうか。ゲート入りをやり直すことになった前走(日本TV盃7着)は、一度ゲートから出された時に気持ちが切れてしまったのか、すごくおとなしくなっていて…。スタートを切ってからも走る方に気が向いていないような感じだったといいます。
「大変だけど、うるさいくらいがいいんでしょうね。前走はゲートのこともあったし、スピードをそがれてしまう馬場で、持ち味が生かせなかった。決して力を出しての敗戦ではありませんよ」
その前走時は休み明け感も強かったそうですが、今回は同じ休み明けでも相当な負荷をかけて乗り込めています。
「2週前は(武)豊さん、1週前は(今村)聖奈が調教に乗ってくれました。レースは豊さんで臨みますが、別の騎手が乗ってくれるのも、いい負荷になりますからね。ありがたいです」
2週前=ウッド7ハロン98.4-11.3秒、1週前=同94.2-12.7秒。どちらも相当な好時計。以前から調教で動いていた馬とはいえ、脚力そのものが以前とはまるで違う感じです。
「入厩したばかりのころはまだ幼くて、トモもゆるゆる。ただ、その当時ですら常歩より速歩、速歩より駈歩と、スピードが速くなるほど、“いい馬だな”と思える動きをしていました。緩さが解消された今は、ゆったりしたペースでも頭を上げたりしなくなったし、成長を感じますね」
コーナリングはまだ苦手なようですが、ある程度スピードに乗せて行って、グッとハミを取らせると安定するそう。前走時は
凱旋門賞騎乗のため乗れなかった
ベストパートナーの
武豊騎手に手綱が戻るわけですし、そのあたりは心配ないはず。何より今回は「他のどの馬より“攻めの調教”をしてきた」という平井助手の自信あふれるセリフが頼もしいではありませんか。
あとは理想としている脚抜きのいい馬場になってくれれば…。冒頭のように“一人だけ勝負服が汚れていない
武豊騎手”と相棒
ノットゥルノが笑顔で帰ってくる姿を拝めるかもしれません。
(栗東の夜想曲女子・赤城真理子)
東京スポーツ