栗東トレセンの調教スタンドから最も離れている
高橋義忠厩舎付近をうろついていた時、ふとある馬の名が頭をよぎった。
メイショウゴルシ-。いかにも
ゴールドシップ産駒であろう2歳馬が、確か最近入厩していたような…。
ちょうどその時、高橋忠師が帰ってきたので確認してみた。すると、師は「今、厩舎回りを乗り運動している芦毛ですよ。ちょっと名前の方で先に注目されちゃって…。ウマ娘ですか?ありがたいことなんですけど」と苦笑いを浮かべていた。
申し訳ないが、私も「ウマ娘」なるものにひどく疎い。それでも、師と同様にその存在が競馬界を盛り上げてくれていることには感謝している。恐らくは、父の愛称であった「ゴルシ」というワードに注目が集まっているのだろう。応援してくれているファンに少しでも貢献できれば…との思いで、同馬のことを詳しく聞いてきた。
まずは血統。高橋忠師に聞くと「北海道の
グランデファームに、衣斐さんっていう血統評論家のような方がおられるんですが、その方が『配合がいいね〜』とおっしゃるんです」と笑顔。確かに、血統表を眺めるのが好きな私も、感動で涙が出そうになった。ぜひ皆さんもご覧ください。
ゴールドシップ産駒で、母は師が手がけてダートで3勝を挙げた
メイショウタラチネ。さらにその母は師の父・成忠氏が手がけ、10歳まで走って重賞10勝を挙げた
メイショウバトラーという激シブ血統だ。師によると「母の
メイショウタラチネを管理していたこともあり、初年度産駒ということでやらせてもらいました。全きょうだいの妹も担当させてもらう予定です」とのこと。屈腱炎を克服して長く活躍したバトラーの血が、大きく開花することを願わずにはいられない。
そして馬体面。私の目から見た芦毛馬は、思いのほかスリムに見えた。「実は
ゴールドシップの子を扱うのが初めてなんです。顔つきは似ているんですけど、今で440キロぐらい。お父さんのイメージで大きさを求めてしまうのかも知れませんが…。男馬なので正直、もう少し体はほしいですね」と師はさらなる成長を望んでいた。
素質については「浦河の育成にいる時からとても柔らかい動きをしていました。ただ、思っていたよりも体が大きくならなくて、というのが今の現状ですね」。そして、皆が知りたい性格は「お父さんのようなややこしさもなく、今のところは扱いやすいです。それでいて、前向きさもありますよ」だそうだ。そのうちヤンチャな面が出てくるかも知れないが、いずれにしても健康ですくすくと育ってほしい。
7日にはレースでコンビを組む
ミルコ・デムーロが騎乗し、栗東CWで6F83秒8-37秒8-11秒9をマーク。併走遅れに「もうひとつ動き切れない感じでしたが、まだ時間がありますからね」と師。注目のデビュー戦は28日の中山5R(芝2000メートル)を予定。「体つきを見るとマイルあたりが良さそうな感じもしますが、血統面もありますし、その先は初戦の結果を見てから方向性を決めたいですね」と見通しを語った。
ひと昔前、トレセンでは「ダビスタがきっかけでこの世界に入った」という厩舎関係者を数多く見かけた。現在、人手不足でやや先細り傾向にある競馬界にとって、間口は少しでも広い方がいい。師は「メイ
ショウさんのところにも、ウマ娘に関する問い合わせがかなり来ているそうです。ゴルシは長い目で見てもらいたいですが、ファンのためにも頑張りたいですね」と愛馬への意気込みを語った。
ファンタジーの世界も楽しいが、ウマ娘ファンの方々にはぜひ競馬場へ足を運んでもらい、蹄(ひづめ)から放たれる重低音や、死闘を繰り広げた後の息遣い、炎のように煌めく湯気を感じてもらいたい。生で見るサラブレッドは本当に美しいものです。懸命に走るゴルシの姿に胸を打たれ、リアルな世界に飛び込む若者が一人でも多く増えることを切に願っています。(デイリースポーツ・松浦孝司)
提供:デイリースポーツ