「まだ…いや、まだまだの状態ですね」
日本ダービーこそ
シャフリヤールの鬼脚に屈したものの、
皐月賞、
天皇賞・秋、そして
有馬記念とGI・3勝の華々しい成績を収めて昨年の
年度代表馬に輝いた
エフフォーリア。今年は歴史的名馬への道をまい進するのかと思いきや、今年初戦の
大阪杯で9着、続く
宝塚記念で6着と続けて1番人気を裏切る結果に…。
その上、体調がなかなか上がらず、
天皇賞・秋からの復帰予定がこの
有馬記念(25日=中山芝内2500メートル)へとずれ込んだとなれば「
エフフォーリアは終わった」と冷ややかな声が聞こえてくるのも致し方ないことなのか? 2週前追い切りを終えた7日、そんな雑音をシャットアウトするどころか、冒頭のセリフを口にしたのが厩舎の番頭格・水出大介助手であった。
もはや暮れの
グランプリでの大復活劇というシナリオは実現不可能…。半ば諦めに近い心境で14日の1週前追い切りを見守った当方であったが、3頭併せの真ん中から力強いフットワークで伸びてきた姿には正直、驚きを禁じ得なかった。
実のところ、この日にマークした南ウッド5ハロン67.4-52.6-37.6-11.4秒の時計は、2週前の67.8-51.7-36.7-11.4秒と数字的に大きな差はない。しかし、中身は結構、違う。重めに映った2週前と比べて脚さばきは素軽さを増し、前進気勢も旺盛に。そして水出助手も「良くはなってきています。“まだまだ”ではなく、“まだ”になりましたね」と引き続き辛口ながらも、
エフフォーリアの確実なる上昇に安堵の表情を見せていたのだ。
むろん、陣営はただ指をくわえて自然回復を待っていたわけではなく、人為的に“2つの改良”を施していた。
「デビューから調教は往々にして朝一番でしたが、この中間はなるべく遅い時間に行うようにしています。ほら、今朝(14日)だって(午前7時と10時では気温が)8度も違うでしょ。汗の出る量はかなり違ってくるはず。それとプール調教も取り入れました。脚元に負担をかけることなく、いつも以上にトレーニング量を高めています」(水出助手)
厩舎スタッフは競走生活の岐路に立たされた
エフフォーリアと今、極限ともいえる密度の濃い時間を過ごしている。もちろん、それは指揮官も同様だ。
「中間は元気があり余っている感じで走っている。やっぱり、そうじゃないとレースでも走れないよな。夏場を全休したかいあって、今はウイークポイントの爪の不安がなく、だからしっかりと負荷をかけられる。結果が出せていない後でもファン投票2位に支持されたのは本当にありがたいこと。ぜひとも恥ずかしくない競馬をさせたい」(鹿戸調教師)
さらに1週間がたち、いよいよ大一番まで数日に迫ってきた。果たして
エフフォーリアは“まだ”の状態から脱して、昨年V時のデキを取り戻しているのか。すなわち、大一番の劇的な変身=復権の連覇があるのか、ないのかは、21日の最終追い切りに「その答え」があると思っている。
(美浦の見極め野郎・虎石晃)
東京スポーツ